2020-08-09

第一章「自分感情すら他人の作り上げたものを借用するような世界

この寄る辺のない世界

何もかもバーチャルな、手応えのない、砂糖菓子のような、現実感のない、コミュニケーション不全の世界で、我々は希薄リアリティに苦しんでいる

仮想架空舞台の上で、我々は自分感情すら他人の作り上げたものを借用し、あたか自分のものかのように錯覚する

何もかも本物ではない、偽物ばかりの世界で、それでも本当の感情を、真実動機を、確かなる自分を実感したい

明日世界が終われば良い

明日、大切な人が最終兵器になれば良い

今、この世界コロナウイルスによって、道端に死が転がっているのが見えるようになった

元々、死はそこにあった?そんな筈はない

もし、死がもう少し近くにあり、この社会漂白されていないのであれば、私の真綿のような苦しみはもう少し鮮烈さを確かなものにしていた筈なのだ

そして、今この時でさえ現実不全に苦しまないですんだ筈なのだ

そう、すぐ隣まで死の香りが漂っている、今この瞬間ですら、本当の感情を覚えることができないでいるのだ

世界と今私が生きている現実が全くリアリティをもって繋がってこない、この不全

地に足のつかないのであれば、浮き足立つくらいなら、いっそのこと現実が見えるまで堕落し、生きて、そしてまた墜ちていきたい

自己破壊行為自傷行為は寄辺を探す旅である

人は、足場のない天国よりも、例え地獄だとしても足場のある所を望むのである

その日に生きることに精一杯になりたい

「被膜越しのような手応えの現実」を終えたい

どこまで進めば自己一致なのか分からないこの世界を終わらせたい

目の眩むような生々しい現実から帰還した人々は、必ず自分世界という碇をこの世に垂らし、自己一致をしてこの現実を塗り替え切り裂いていく

その輝かしさに、我々は常に惹かれるのである

第二章へ続く

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