元々芸能人に詳しくない自分でさえ、この人の事はそこそこ好きで。画面の向こうはもちろんのこと、舞台の上でピンヒールを履いて、凛とし颯爽と歌い踊る姿はとても衝撃でかつ、綺麗だった。
順風満帆に見えていただけで、何かしらあったのだと思うと、やり切れない。
昨日の夜、私は友人達と豪勢な食事をした。満足気に彼らと別れて、電車に乗って帰宅した。
その帰り道、別の路線で人身事故があった。憂うでもなく、怒ることも無く、何事も無く、私は帰宅した。
私達が楽しく過ごしている中で、誰かは悩み、自ら命を絶っていた。いや、もしかしたら体調不良でホームに落ちてしまったのかもしれない。
何の気にも留めない日常の中に、死は存在していて、弔う思いもまた沢山生まれている。自殺だけじゃない、今この瞬間に事故や病気で亡くなる人がいて、誰かが悲しんでる。
三年前、昔付き合っていたAが「人身事故で帰れない。ほんとに迷惑だからやめろ」とツイートしていた。
他にも沢山の人がツイートしていた。その時は、あぁ大変だなとしか思ってなかった。
その数十日後、その人身事故で亡くなったのは、Aの後に付き合ったBだった事がわかった。
彼が亡くなる前日や、その真相を知る前までは、私は楽しく何も考えずにただただ日々を過ごしていた。だって知らなかった。そんな事になってしまっていたなんて。
BのSNSを見ると、亡くなる前々日まで、普通そうだった。そもそもSNS更新自体が多くない人間だった。亡くなる前日のツイートはなかったけれども、病んだ様子もなくて、元気そうだった。
なぜ自ら命を絶ったのか、それか体調不良でホームに落ちてしまったのか、真相は分からない。
私が楽しく可笑しく過ごしていた日々の中で、そして今も誰かが亡くなり、誰かが悲しむ。寄り添ってあげたかった、久々に連絡してみればよかった、舞台を見に行けばよかった、ラジオを聞けばよかった……。そんな後悔をしても、もう何もかも遅い。