2020-05-15

人生初の寿司屋名前を覚えている

俺の場合かぶ寿司という店。チェーン店でも回転寿司でもない、郊外普通の店。店に行ったことはなくて寿司桶でしか知らない店。回覧板広告しか店舗の姿は知らない店。

本家筋で集まりごとがあるときはいつもその寿司屋の出前が昼に出た。そのころはナマ物に抵抗があったから、巻き寿司箱寿司くらいしか食べるものがなかった。と言っても巻き寿司が苦手で、箱寿司のみを食べていた。

いとこ達と遊ぶことは楽しかったが、食事に関しては特別楽しい思い出はない。酒を飲んで楽しげな周りの大人たちの雰囲気の中に俺の居場所はなかった。酒に対して苦手意識めばえたのはその時が最初のように思う。

次第に集まりへ顔を出すことも億劫になった。家族そろって寿司屋へ行くこともなかった。俺以外の家族で行ったことは、きっとあるのだろうけど。

寿司はついに好きにはなれなかった。

初対面の人に苦手な食べ物を問われたとき寿司も酒も苦手で・・・と答えると、「まんじゅうこわい」な冗談と思って大いに笑ってくれるのだが、実際はこんななのだ

かぶ寿司はずいぶん前に潰れた。あの店がもし回転寿司だったら、子供だった俺の寿司へのイメージもまた違ったものになったのかもしれない。

そんなことを先日思っていた。かつて寿司を注文してくれていた伯父の通夜の場で。食事は桶に入った寿司だった。かぶ寿司とは違うその高そうな寿司に、俺は箸を伸ばすことができなかった。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん