2019-08-04

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身寄りのないおばちゃんは何を考えて俺を探してたのか

子供のころ両親が共働きで、うちに幼い俺を世話してくれてた佐々間のおばちゃん

と言う人が居た。

おばちゃんちょっと頭が良くなかったせいか仕事は持たず

自分ちの畑とうちのお手伝いで食ってるようだった。

おばちゃん仕事学校から帰ってきた俺にご飯を作ることと、家の掃除洗濯

あと体が弱く入退院を繰り返してた婆ちゃん介護だった。

ある日俺が学校から帰ってくると珍しくおばちゃんは居なかった。

変わりにいつも寝たきりの婆ちゃんが起きていて、居間お茶を飲んでいた。

おばちゃんが家に居るのが普通だったので、お婆ちゃん今日はおばちゃんは?

と聞くと今日はまだ来ていないよと言って、俺を二階に閉じ込めるように押し込んだ。

今日は誰が来ても降りてきちゃいけないよと言ってお菓子とぽんジュースを渡された。

誰が来てもって誰が来ても?と聞くとお婆ちゃんは少し困ったような顔でそうだよと

言い、シーっねと口に指を当てながらふすまをしめた。

俺は大人しく炬燵に入りテレビを見てると6時近くになって薄暗くなってからおばちゃん

の声が聞こえた。

二階と言っても狭い家、誰が来てもって玄関に誰が来たかくらい聞き耳立てなくても

分かる。

「洋介君はまだ帰ってきておらんかねえ」とおばちゃんが言うので出て行こうかとも

思ったが、婆ちゃんの誰が来ても降りてくるなと言う言葉を思い出しそのまま炬燵で

ごろ寝を続けた。

おばちゃんと婆ちゃんのやり取りに暫く聞き耳を立てながらTVを見続けた。

また暫くして佐々間のおばちゃんがやってきた。

「洋介君はまだ帰ってきとらんかねえ。

浜屋(俺がよく言ってた駄菓子屋)にもおらんようやが」

すると婆ちゃん

今日はまだやがねえ。友達のところに遊びに行く言うてたから遅くなるんやないかねえ」

と嘘をついた。

幼心に俺は匿われてるのだとぼんやり悟り、息をコロして炬燵に潜り込んだのを覚えてる。

日も落ちすっかり暗くなっておばちゃんはまたやって来た。

「洋介君帰ってきたね?」

ちゃんは少しきつい口調で

「まだよ。まだ帰らんよ。今日はもうご飯いいからお帰りなさい。」

と追い返した。

暫くして8時くらいになって父母が帰ってきた。

ちゃんがのそのそと階段を上がってきて俺にもう降りていいよと

言ってきたので俺はいつもより大分遅めの夕飯を食べた。

その晩、近所の竹やぶで佐々間のおばちゃんが首を吊っているのが見つかった。

遺書には希望がないのでもう氏にます。一人で氏ぬのは寂しいみたいなことが書いてあったらしい。

身寄りのないおばちゃんは何を考えて俺を探してたのか推測するとほんのり怖くてちょっと悲しい。

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