うちの奥さんは物の扱いがけっこう荒っぽい。食器を片付けるときはガチャガチャいうし、ドアはバタンと閉める。
自分はその反動で……というわけでもなく、元から生活音をあまり立てない。
奥さんはトイレの紙もたっぷり使う。ロールはあっという間になくなるし、紙を使いすぎて詰まったこともある。自分がたまたまトイレの近くにいたりすると、ロールが勢いよく踊り、ホルダーの金属部品がガラガラいう音が聞こえるのだ。
同じ音が職場の女子トイレからも時々聞こえるのだ。好んで聞いているわけではない。男女のトイレが隣なんだからどうしても近くを通り過ぎる時に聞こえてしまう。
新鮮だった。同僚の中に、生活音のうるさそうな人がいないからだ。お客さんはあまり来ないオフィスだから、社員だと思う。うちの奥さんの生活音がうるさいのは、当然ながら自宅という要因があるだろう。きっとその社員もトイレだからこそ自我を解放しているに違いない。誰だかはわからないけど、自宅では結構荒っぽいのかもしれないと思うとそのギャップがほほえましい。