当方、酒鬼薔薇ファンの出会い系サイトの「酒鬼薔薇王国」というところでずっとゲイだと偽っていました。プロフィールには「首を絞めると射精する」と書いていましたが、実は20代の女性です。職場で知り合った哲也さんという方を好きになってしまって、どうやって気を引こうか考えていたら、哲也さんがゲイであること、サディストで酒鬼薔薇のファンであることを知りました。
「酒鬼薔薇王国」は雄々しいひとばかりでした。そのなかで男らしくふるまうのはとてもつらかったです。土師守さん、井垣弁護士、青島先生……いずれも王国にあらわれるのは偽物でしたが、いずれも男のなかの男でした。特に青島先生はアフリカでライオンを仕留めた話が御自慢で、イスラム国で豚カツ屋をやっていた哲也さんとは仲良く殴りあいをしていました。
私も男らしく振る舞おうとして、茶髪に髭のIT系の社長を装ってみましたが、あっさり見破られました。匿名掲示板にスレが立ち気が狂いそうになりました。女だということまでバレたのです。私は許しを乞いましたが炎上がおさまる気配はありません。
「何でそんなことをした」──何度も聞かれました。私は男として哲也さんと渡り合いたかったと説明しましたが、どうしても違和感が拭えませんでした。哲也さんによる激しい罵倒。それは私が望んだ男同士の殴りあいではなかったのか。最後の最後になって私は哲也さんに抱かれたかったのだと気づきました。私は女として哲也さんにかわいがって欲しかったのです。でももう無理です。酒鬼薔薇王国から静かに消えるしかありません。さようなら。
詐欺師め