数年前に彼女と別れてから夏祭りにはわざわざ行くことはなかった
思い出してしまうからというのもあるが、友人たちも祭りが好きではない
なにかあるかもしれない、いつもと違う行動を取ったらなにか変わるかもしれない
たこ焼きくらい買って食べたら楽しいんじゃないか?案外いい出会いもあるんじゃないか?
屋台の眩しい光が目に飛び込んできた
こんな雰囲気久しぶりだ
気分も高揚するというものだ
しかし、そこには何もなかった
正確には愉快に笑う家族連れや友人、恋人同士で楽しんでいる者たちばかり
いい歳をしたおっさんが1人で歩いているのを最後まで見かけなかった
俺、なにしてるんだろうなって気持ちになって
なんとはなしに昔のことを思い出しながら歩いた
過去を美化しすぎるのは良くないとわかっていながらも
二人で浴衣着ていったなとか色々思い出した
ジジジジ
急に足元でなにか音がしたと思ったら蝉だった
でもしばらくしたら蝉は動かなくなっていた
そうかお前一生懸命生きたんだな
踏まないようにそっと横を通り帰路についた