あるグループの中でいじめられてたヤツが、休み時間にプロレス技かなんかをかけられたあとに俺の椅子でヘバってたので、「邪魔だ、どけよ」って言ったのよ。
なんかそれで張り詰めてたもんが切れてしまったらしくて、俺に泣きながら殴りかかってきてさ。
めんどくさいから、前蹴りみたいな要領で蹴ったわけ。そしたらみぞおちにいい感じに入っちゃったみたいで、そいつが派手にのたうち回っちゃってさ。
で、ちょうどそこに教師が来て、次の授業前に緊急クラス会。「どうしてこうなったんだ?」と聞くんで、「俺の席に座ってて邪魔だったから『どけ』と言ったら殴りかかってきたから、蹴った」と答えたわけですわ。
そしたらいじめの首謀者だったやつが「だからってあんな風に強く蹴ることはないだろ〜」とか言い出してさ。で、いじめられてたやつは、もともとしゃくりあげてたんだけど、さらにわけがわかんない勢いで号泣しちゃってさ。もうまともにしゃべれないの。それ見てさらにいじめの首謀者は「ああ、〇〇くんがかわいそうだ〜。こんなに泣いて〜。泣かせたのは増田だぞ〜」だって。
もうなんか、そこで子供ながらにめんどくさくなっちゃってさ。「へーへー、すんませんでした」とか適当に謝って終わらせたんよ。
ま、別にそのことがきっかけで俺がどうにかなったとかないし、いじめも激しくなったわけでもなく、おとなしくなったわけでもなく。風の噂じゃ、いじめの首謀者もいじめられてたやつも、地元で適当にやってるらしいが、なんとなく、二十年近く経った今でも、よくわからない、落としどころのない話として不意に思い出してしまうことがあるのだった。