直属の男性上司は、テキパキと仕事をこなし、残業を強いることもなく、愛想がいいとまでは言わないが普通に部署内の雑談にも参加する人間だ。
私の育成が自分の仕事の一つだと思っているようで、根気よく教えてくれる。
他の上司というものを知らないから、「可もなく不可もなく」だと思っているが、「不可がない」時点で実際にはかなり恵まれているのだと思う。
彼の、今年大学を卒業するという息子の名前が、2010年代生まれといってもおかしくないようなキラキラネームだったのだ。
雑談の折に、不意にカミングアウトしてきて驚いたのだが(他の社員さんたちも知らなかったらしい)、さらに追い討ちをかけるように、上司は自分がつけたというその名前に誇りを持っているようだった。
その瞬間、それまで抱いてた「まともな人だなぁ、堅実な人だなぁ」という思いは砕け散った。
恋心や憧れの類は一切感じていなかったが、自分を教え導いてくれる上司のことを、まっとうな人間だと思いたい気持ちがあった。
森蘭丸キラキラネーム説