限定知性がその限定的な繁栄のみを独善的に追求するのであれば(有限であるということを無知のままに真として受け入れ、それを実行に移せば)、支配と継承が存続における重要な概念として受け入れられることとなる。支配とは一部の個または集団の限定知性の得た知及び理念を他の限定知性の固有の知、経験を尊重することなく押しつけ、蹂躙し、その形へと染め上げることを指す。個々の価値や経験は個に属することを許さず、特定の個、または集団の限定知性のみが多数の限定知性を浸食し、それら固有の能力や活動領域で培われた影響力を搾取したうえで、一部の限定知性のためにこれらを利用する状態を是とすることとなる。継承とは、支配で得た益を一部の限定知性がその存在を終えても自身が属していた集団に従属するようそれらを維持、存続、そして繁栄させることを指す。限定知性の活動領域において知性の介入は顕著に示されることはない(それゆえ、限定知性が自身の限られた知見における能動性を発揮しうる事由ともなっている)。従って、限定知性という限られた活動領域においては支配とその継承が相互補完に匹敵する対抗軸として永続的に存在しうる。
知性にとって、支配と継承により占有された限定知性は望ましい状態とならない。支配と継承によって染められた限定知性は、本来の個の限定知性の能動的な活動領域を著しく制限し、その知性が個別の活動から得られるうる経験を最低限のものにしてしまうからだ。