たとえば 「うんち」「うんこ」なら「便」「大便」「糞便」だろうし、「おしっこ」だったら「小便」とか「尿」だと思うが、
医者が患者に話すときなんかは「ガス」という言い回しをすることはあるが、これはシチュエーションや文脈があるから分かるのであって、
「おなら」は、あくまでも「ガスの一種」であって、「ガス=おなら」ではない。
「液体=尿」ではないのと同様だ。
「屁(へ)」という言葉があるが、これはどちらかというと、「うんち」を「糞(クソ)」と表現しているのに近い。
「おならをする」という動作については、かの有名な太宰の名作『富岳百景』に「放屁(ほうひ)なされた」という表現がある。
念のためか漢和辞典を調べてみると、「屁」の訓読みが「へ」、音読みが「ひ」らしい。
日本語では基本的に、音読みが「改まった表現」で使われることが多いし、
だからこそ「放屁」は「ほうへ」ではなく「ほうひ」と読むのだろうが、しかし「屁」を単独で「ひ」と用例は、自分の知る限りでは見たことが無い。
そういえば「おしっこ」の場合は「しっこ」という言い回しもあるので、「お」は丁寧語を作るための接頭辞なのだろうが、
「おなら」のことを「なら」といっている人は見たことが無い。
にもかかわらず、なんとなく「おしっこ」からの類推で、丁寧語っぽく見えているのも、話を複雑にしているような気がする。
にしても、誰もが生きていれば必ず遭遇するこのような事象について、改まった場所で言及する際の一般的な語彙がないというのは、なんだか不思議な気もしている。