円の面積は
半径×半径×円周率
で求めることができる。
半径2cmの円の面積を計算してみよう。
円周率は無理数なので、無限に桁があるから、数値計算をするときには筆算だけするというわけにはいかない。
よっていくつかの工夫を用いる。
a.)円周率π=3.1415926535…を用いて計算する。実際はできないが、できるとする。今回はエクセルのPI関数を用いて計算したもので代用した。これを真の値とよぶことにする。
b.)円周率を3.14として計算する。筆算などを行う。これを小学校計算とよぶことにする。
c.)円周率を有効数字3桁の概数3.14として計算する。bの計算結果を有効数字3桁の概数で表せばよい。これを概数計算とよぶことにする。
結果は以下のようになる。半径が2cmのとき、半径×半径は2×2=4である。
a.)4×3.1415926535…=12.56637061…
このときbとaの差は
12.56-12.56637061…=-0.00637061…
cとaの差は
となる。
概数計算の結果12.6よりも、小学校計算の結果12.56の方が真の値12.56637061…に近い。
今度は半径19cmの円の面積を計算してみよう。
a.)361×3.1415926535…=1134.114948…
今度は差をとらなくても、小学校計算の結果が概数計算の答えより真の値に近いことがわかるだろう。
エクセルで他の数についても調べてみよう。
自然数n | a.)πn | b.)3.14n | c.)有効数字3桁の概数 | d.)bとaの差 | e.)cとaの差 | f.)eとdの絶対値の差 |
1 | 3.141592654 | 3.14 | 3.14 | -0.001592654 | -0.001592654 | 0 |
2 | 6.283185307 | 6.28 | 6.28 | -0.003185307 | -0.003185307 | 0 |
3 | 9.424777961 | 9.42 | 9.42 | -0.004777961 | -0.004777961 | 0 |
4 | 12.56637061 | 12.56 | 12.6 | -0.006370614 | 0.033629386 | 0.027258771 |
5 | 15.70796327 | 15.7 | 15.7 | -0.007963268 | -0.007963268 | 1.77636E-15 |
6 | 18.84955592 | 18.84 | 18.8 | -0.009555922 | -0.049555922 | 0.04 |
7 | 21.99114858 | 21.98 | 22 | -0.011148575 | 0.008851425 | -0.00229715 |
8 | 25.13274123 | 25.12 | 25.1 | -0.012741229 | -0.032741229 | 0.02 |
9 | 28.27433388 | 28.26 | 28.3 | -0.014333882 | 0.025666118 | 0.011332235 |
10 | 31.41592654 | 31.4 | 31.4 | -0.015926536 | -0.015926536 | 3.55271E-15 |
11 | 34.55751919 | 34.54 | 34.5 | -0.017519189 | -0.057519189 | 0.04 |
12 | 37.69911184 | 37.68 | 37.7 | -0.019111843 | 0.000888157 | -0.018223686 |
13 | 40.8407045 | 40.82 | 40.8 | -0.020704497 | -0.040704497 | 0.02 |
14 | 43.98229715 | 43.96 | 44 | -0.02229715 | 0.01770285 | -0.004594301 |
15 | 47.1238898 | 47.1 | 47.1 | -0.023889804 | -0.023889804 | 0 |
16 | 50.26548246 | 50.24 | 50.2 | -0.025482457 | -0.065482457 | 0.04 |
17 | 53.40707511 | 53.38 | 53.4 | -0.027075111 | -0.007075111 | -0.02 |
18 | 56.54866776 | 56.52 | 56.5 | -0.028667765 | -0.048667765 | 0.02 |
19 | 59.69026042 | 59.66 | 59.7 | -0.030260418 | 0.009739582 | -0.020520836 |
20 | 62.83185307 | 62.8 | 62.8 | -0.031853072 | -0.031853072 | 7.10543E-15 |
21 | 65.97344573 | 65.94 | 65.9 | -0.033445725 | -0.073445725 | 0.04 |
22 | 69.11503838 | 69.08 | 69.1 | -0.035038379 | -0.015038379 | -0.02 |
23 | 72.25663103 | 72.22 | 72.2 | -0.036631033 | -0.056631033 | 0.02 |
24 | 75.39822369 | 75.36 | 75.4 | -0.038223686 | 0.001776314 | -0.036447372 |
25 | 78.53981634 | 78.5 | 78.5 | -0.03981634 | -0.03981634 | 0 |
26 | 81.68140899 | 81.64 | 81.6 | -0.041408993 | -0.081408993 | 0.04 |
27 | 84.82300165 | 84.78 | 84.8 | -0.043001647 | -0.023001647 | -0.02 |
28 | 87.9645943 | 87.92 | 87.9 | -0.044594301 | -0.064594301 | 0.02 |
29 | 91.10618695 | 91.06 | 91.1 | -0.046186954 | -0.006186954 | -0.04 |
30 | 94.24777961 | 94.2 | 94.2 | -0.047779608 | -0.047779608 | 0 |
115 | 361.2831552 | 361.1 | 361 | -0.183155163 | -0.283155163 | 0.1 |
116 | 364.4247478 | 364.24 | 364 | -0.184747816 | -0.424747816 | 0.24 |
117 | 367.5663405 | 367.38 | 367 | -0.18634047 | -0.56634047 | 0.38 |
118 | 370.7079331 | 370.52 | 371 | -0.187933124 | 0.292066876 | 0.104133753 |
119 | 373.8495258 | 373.66 | 374 | -0.189525777 | 0.150474223 | -0.039051554 |
120 | 376.9911184 | 376.8 | 377 | -0.191118431 | 0.008881569 | -0.182236862 |
121 | 380.1327111 | 379.94 | 380 | -0.192711084 | -0.132711084 | -0.06 |
122 | 383.2743037 | 383.08 | 383 | -0.194303738 | -0.274303738 | 0.08 |
123 | 386.4158964 | 386.22 | 386 | -0.195896392 | -0.415896392 | 0.22 |
124 | 389.557489 | 389.36 | 389 | -0.197489045 | -0.557489045 | 0.36 |
以上の表は
http://tetsu23.my.land.to/table.htm
を利用してコピペした。
=A2*PI()
=A2*3.14
=C2-B2
確かにn=121においては、概数計算の結果380の方が小学校計算の結果379.94よりも真の値380.1327111…に近い。
ところが次のn=122の場合では小学校計算の結果の方が概数計算の結果よりも真の値383.2743037…に近い。
表の右端の列でbとaの差、cとaの差の絶対値の大きさを比較をしている。すなわち、bとc2つの計算結果の真の値との距離の差をとっている。
よって、右端の列の値が正のときのnにおいて、小学校計算の方が概数計算より真の値に近い、精確な答えを出せることになる。
小学校計算の方が概数計算より精確な答えを出せるnとそうでないnは、どちらの方が多いだろうか?
概数と定数値を同一に扱って真の値との距離を比較しているからだ。
概数とは、ある点からの触れ幅を定義しているものであり、あるxの値がa≦x<bにあるということを言っているに過ぎない。
すなわち、n=121において121πが有効数字3桁の概数で380というのは
であるということを言っているにすぎない。
したがって、筆算の末に半径11cmの円を「379.94です!」と笑顔で言った子どもがいるのなら、
ちゃんと範囲内におさまる値を計算できた事をほめてやらねばならない。
ならば同時に380も380.1327111も正解とせよというのは一理ある。
ただし、これは面積の値をある精確さで以って求めよという問題に答えた場合であって、121×3.14の筆算の結果を380とした子どもには計算が間違えっているとして×を与えなければならない。
まとめると、
「半径11cmの円の面積を380㎠とした方が380.1327111…㎠により近い値であるから、答えを379.94㎠とするのは誤りである」という議論はなりたたない。
有効数字3桁の概数で計算した379.94という結果は、上から4桁目、5桁目が信頼のおけない数字であるという状態のものであるだけで、値の精確さ、すなわち真の値との距離の近さ競うものではない(上の表をみよ)。
信頼のおけない部分を丸めた数値である380の方が、よりおおまかに信頼がおける数値だというだけである。
なおn=300あたりから計算結果が4桁になり、1の位がまるめられるので、概数と真の値の差はより大きく感じられるようになってしまう。
エクセルをおもちならやってみてほしい。
間違ってるところがあったらプリーズテルミー。