果てしない物語が始まるときは、たいていしょうもない物語からはじまる。
その日も例外ではなくて、ほんのちょっとした諍いがおこったとのことだった。
酒場にいたのはたいていのよっぱらいと、風変わりなやつと、身元不明のやつ。
あとは女。
だいたいのことはうまくいっていて、ときどきのこうしたいち、にのことを抜かせば、何の変哲も無い町なんだと思う。
酒場ではじまった諍いは、ほら、もう終わっていた。
そうこうしているうちに、僕は目を覚ました。
場所は、自宅の2階。2階とはいっても、自宅は全部で3階ある。その中頃の、2階の、自分の部屋だってわけだ。
自分の部屋と言っても、ただの自分の部屋じゃない。僕の自分のベットがある自分の部屋だ。
そこで、そのベッドの上で僕は目を覚ました。
目を覚ましたと言っても、おぎゃーとか言ったわけじゃなくて、僕もいい加減そろそろ元服なわけで、
厳かに静かに起き上がったわけだ。意識の上は。
ぱちっと、目を覚まして、布団から抜け出して、服を着て、外に出かける。
そう考えるとわくわくしてくる。そのわくわくする時間を、想像しながら、目だけ閉じて、目だけ覚ましてるのが僕のお気に入りの時間ってわけだ。
ほら、こう回りくどいぐらい説明したって、僕の言う目を覚ますの意味がちっともわかってない。
目を覚ますってのは、ほら、こう、こうだよ。僕の言う目を覚ますだ。
おぎゃーと、下の階から音が聞こえた。これはそろそろアレのサインで、たいていは僕の予想通りだ。
この時間に降りていったら、大抵の朝ご飯は台無しになる。あと10分は、少なくともこうして目を覚ましていたい。
そしたら僕は下に降りるんだ。降りて、朝を始めるんだ。
朝はいつでも朝で、それが夜だったことは今まで一度も無い。
朝がきたときには、朝が来ていて。夜が来ていたなんてことも一度も無い。
朝が来たときに夜がきていたなんてことがあれば、それはほら、君が不健康なんだ。
そんなことを思っていると、もう10分はたったと思う。
ようやく僕はほんとに目を覚まして、あっというまに下にいた。
もう説明している余裕はなくて、ぼくはあっというまに食べた。
ベーコンの脂だけで焼いたベーコンと、その隣でやいた目玉焼き。
かりかりの端っこが、僕のお気に入りで、それはベーコンと卵の良能のことを言っている。
あの最後に残った油を、残った一かけのパンですくい取って食べてこそ、満喫したと言える。