疲れている人は今週も毎日来ていた。
「疲れがすっかり取れました。ありがとう!」
沈黙って言った瞬間沈黙がなくなるのと同じで、疲れている人の疲れがなくなったら疲れている人ではない。
「でも…」
風間とおるが神妙な顔で続けた。
「痛いんです。」
「そこは内蔵が一番多いんです。胃も食道も肝臓も胆嚢すい臓も大腸も心臓も肺もその辺に集中してるんですよ。」
私は先日触れた腹部のしこりを思い出した。
「食後に痛いです。」
「食後に痛いのは、十二指腸潰瘍の可能性がありますよ。逆に胃潰瘍は食前に痛みます。あと食後には胆嚢が収縮して動くので胆嚢炎っていう可能性もあります。」
「痛みに効きます。でも胃潰瘍だった場合は胃潰瘍を悪化させますから飲んではいけません。病院でみてもらったらいかがですか?」
すると痛い人は、
「それはどうしても…」
と、それは言わないでほしいという空気が流れる。
「なぜその辺が痛いのか原因が分からないと命に関わりますよ。」
と話す。
「潰瘍が出来てて痛いのか、胃の動きが悪くて痛いのか、胃酸が出すぎて痛いのか、痛いのにも種類があるんです。」
と説明するも、痛い人は
「一番いい痛み止めをください。ボルタレンと湿布も塗れば痛み取れますか?」
と言う。
「それらの薬はかえって痛くなるかもしれませんよ。」
するて、
「疲れの時はいっぱいくれたのに…」
と痛い人。
「え…」
まずかったのかと思い、ここは痛み止めじゃない方向へ行かないといけない。
「胃十二指腸潰瘍が出来ていて痛いとしたら、胃酸を止めなければなりません。口内炎にずっと塩酸をかけていたら口内炎はなおりませんよね。
胃酸は塩酸くらいの強酸性です。この胃酸を抑えないと、潰瘍に胃酸がかかり続けて潰瘍が治らないんです。潰瘍を治すには胃酸から遠ざけないといけません。
そこで、胃酸を抑えるのがH2ブロッカーです。ガスターという薬です。ガスター10という薬がありますが、病院ではガスター20というのが処方されます。
つまりガスター10を二錠飲めば病院の処方ということになります。飲んでみて痛みが止まれば、原因は胃潰瘍だったという可能性が高いかもしれません。
ただ胃潰瘍だけが痛みの原因じゃない場合もありますのでたまたまかもしれませんが。」
「胃酸が出なくて食事していいんですか?」
「食べ物は、胃酸だけで消化させているわけではありません。すい臓や肝臓から消化酵素が出ているから大丈夫です。」
「そうなのか。分かりました。ガスター飲んでみます。ありがとう!」
と言って帰った。
今までの流れだと明日も痛いって来る。
痛みの場所を変えてくるだろう。
私はすい臓のことや腎臓のことは分からない、あと当たり前だが虫垂炎のオペもしたことがない。
医者に行って欲しいな。