2015-05-08

少しだけ、ほほえみが

ずっとずっと家の中で寝ころんでいたんだ。

朝が来たって、昼が来たって、ずっと部屋の中なのさ。

1人暮らしの、このワンルーム6畳の狭い部屋の中で、

僕はずっと寝ころんでいたんだ。

ここ2週間、ずっと。

それは居なくなったあの子のせいじゃない。

それはいだってこの僕のせいなんだ。

僕の弱い心がいつだって、僕自身を歩けなくさせる。

寝転がって、スマートフォンをいじる日々。

ツムツムとクラクラをプレイしたり、飽きたら

まとめサイトリンク先を巡回する日々。

それも飽きたらはてな匿名ダイアリーをのぞいたり、

はてなブックマークの無星の可哀そうなコメント

ひとつめの星をつけてみたり。

寝転がって、それだけの日々なんだ。

まだ学生の身だからこんな生活が可能なんだけど、

こんな生活をずっと続けるとどうなるか、怖くて想像したくない。

寝転がって、ずっとスマホをいじるそんな日々。

の子が僕をふってどこかに行ったのは、もう2週間も前。

そう2週間だ。それだけあればヨーロッパを一周できるだろう。

僕はその時間、ずっとこのワンルームの中にいた。

足は細くなった気がするし、顔色もなんとなく悪くなっていそうだ。

とにかく、ろくな日々じゃないってことさ。

あの日、きみが僕から去らなければ。

たら、れば。そんなことをふと思う。

頭の中でポエムを描く。

不幸な自分主人公の、圧倒的に青臭いポエムをね。

窓は、閉めている。

部屋は塞がれた空間だ。

の子が。。。

もっと僕が。

もっと僕が、ね。

その時なんだ。

その時、少し何か音がした気がする。

なんだっけ、少し。

ピンポン、とかだっけ。

かすかにね。

僕は起き上がってみたんだ。

少なくなった足の筋肉を精一杯動かして、

立ち上がってみたんだ。

そして玄関へ向かう。

どうせ来たのは何かの勧誘か販売だろう。

それはわかっていた。

でも、もしかしたらドアの向こうにいるのは、

の子かもしれない。

そう思いたくなるのが青臭い男だろ?

の子が来てくれたら。

そして僕はドアを開けた。

あの時に行ったサンシャイン60展望台だとか、

吉祥寺南口にあった変わった家具屋さんだとか、

代々木公園にいた不思議な鷹使いの人だとか、

春風の吹く日に皇居のお堀を走った思い出だとか、

いろいろと頭をよぎったんだよ。

でね、

ドアの向こうには誰がいたと思う?

の子

いや、残念ながら、ドアの向こうには「だれも」いなかったんだ。

外には宗教の勧誘でもなく、新聞配達の営業でもなく、あの子でもなく。

ただ、なんとなくピンポンって鳴った気がしただけだったんだ。

ドアを開けたらね、まぶしい光のせいでくしゃっとした表情になってね、

なんか口角が少し上がってしまってね。

僕は少しだけほほえみがあるような顔をして、ちょっとだけ歩こうと思ったんだ。

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