ずっとずっと家の中で寝ころんでいたんだ。
朝が来たって、昼が来たって、ずっと部屋の中なのさ。
僕はずっと寝ころんでいたんだ。
ここ2週間、ずっと。
それは居なくなったあの子のせいじゃない。
寝転がって、スマートフォンをいじる日々。
ツムツムとクラクラをプレイしたり、飽きたら
それも飽きたらはてな匿名ダイアリーをのぞいたり、
ひとつめの星をつけてみたり。
寝転がって、それだけの日々なんだ。
こんな生活をずっと続けるとどうなるか、怖くて想像したくない。
寝転がって、ずっとスマホをいじるそんな日々。
あの子が僕をふってどこかに行ったのは、もう2週間も前。
そう2週間だ。それだけあればヨーロッパを一周できるだろう。
足は細くなった気がするし、顔色もなんとなく悪くなっていそうだ。
とにかく、ろくな日々じゃないってことさ。
あの日、きみが僕から去らなければ。
たら、れば。そんなことをふと思う。
頭の中でポエムを描く。
窓は、閉めている。
部屋は塞がれた空間だ。
あの子が。。。
もっと僕が。
もっと僕が、ね。
その時なんだ。
その時、少し何か音がした気がする。
なんだっけ、少し。
ピンポン、とかだっけ。
かすかにね。
僕は起き上がってみたんだ。
少なくなった足の筋肉を精一杯動かして、
立ち上がってみたんだ。
そして玄関へ向かう。
どうせ来たのは何かの勧誘か販売だろう。
それはわかっていた。
でも、もしかしたらドアの向こうにいるのは、
あの子かもしれない。
そう思いたくなるのが青臭い男だろ?
あの子が来てくれたら。
そして僕はドアを開けた。
春風の吹く日に皇居のお堀を走った思い出だとか、
いろいろと頭をよぎったんだよ。
でね、
ドアの向こうには誰がいたと思う?
あの子?
いや、残念ながら、ドアの向こうには「だれも」いなかったんだ。
外には宗教の勧誘でもなく、新聞配達の営業でもなく、あの子でもなく。
ただ、なんとなくピンポンって鳴った気がしただけだったんだ。
ドアを開けたらね、まぶしい光のせいでくしゃっとした表情になってね、
なんか口角が少し上がってしまってね。
僕は少しだけほほえみがあるような顔をして、ちょっとだけ歩こうと思ったんだ。