おいしい素材は食べ続けなくては味の違いがわからない。どうもグルメ番組や漫画等のせいで、この当たり前のことが殆どの人の頭に存在しない気がする。
人間は初めて口にした味は理解できず、経験した味に置き換えて理解する。
例えば、平飼いの鶏肉や卵を頂いても、以前食べた鳥や卵の味を組み立てて味を感じ、あまり差がないなと感じてしまう。
ただ、1週間も食べていれば味が分かるようになっており、普段の鶏肉や卵(※)を口にしても、物足りなさを感じるようになる。
ここで初めて味の違いを感じるのだ。
これは、味覚においても、脳神経の発達というものがあり、新たな種類の味覚物質を口にしても、それを正しく感じるための回路がないため、もとより持っている味覚物質を感じる回路で代用するためだ。
しばらく食べ続けることで新たな回路が形成され、味の違いを感じるようになる。ただ、その頃には慣れが生じており、食べ比べてみなくては味が分からなくなっている。
まとめると、味覚は普段食べているものに大きく左右されるということだ。
もう一つ例を挙げてみる。しばしば、イギリス料理が世界一不味い等と言われているが、これも味覚の発達の違いが原因である。
イギリスの味覚を例えるなら、和食から醤油と昆布を抜いたものとなる。魚介の旨みと野菜の出汁にハーブのスパイスを合わせた料理が多いため、こういったものを食べなれていない人は美味しいと感じるのは難しいのだ。
これはコンソメの配合にも表れる。コンソメとはブイヨン(肉類の出汁の意味)に野菜のストック(出汁)を加えたものが一般的である。
店舗にもよるが、ターゲットにする人種の好みにより、この配合を変えることがある。米国人であれば、ブイヨンを濃く、日本人であれば、ブイヨンに甘みの強いストック、欧州であればストックを濃く、といった具合だ。
※体験するなら、平飼いの鶏卵と一般的な鶏卵が一番わかり易いと思われる。鳥類の卵は、食べているエサにより、含まれる栄養素が大きく変わる。平飼いと、そうでない卵は、含まれるアミノ酸の数が全く違う。