生まれた時からずっと森のなかで暮らしてきたんだけど、16歳になったからお父様とずっと暮らせるの!
今日の夜はお城で私の誕生日を祝う晩餐会。今朝出会った彼もお祝いに来てくれるんですって!
でも、なんだろう、こう、すごく右手の人差指がかゆいの。なにか、尖ったものとかないかしら?
いや、そうじゃない、もっと、尖った、糸車!そう、糸車の棘がいいの!
いやでも、何を考えているのだ私。これでは変態ではないか。
糸車。一目見るぐらいいいじゃない、なにしろ生まれてこの方見たことないのだ。そう、これは純真な好奇心だ。糸車の棘がどれぐらい鋭いか確かめたいだけなのだ。
侍女の人がおしゃべりしてた。宝物庫にもお父様の部屋にもないけれど、お城の地下にはたくさんの糸車があるんだって。みんな、ずるい。私に隠れてこっそりみんなで糸車の棘に刺されて楽しんでるんだ。
ひたひたひた。人の目を盗みながら、冷たい廊下、薄暗い階段を駆け下りて、ここが地下室か。
地下室の扉を開けると、そこには。
よく見たらわかる、いや見ないでもわかる。あれは糸車の残骸だ。ひどい、一体誰がこんなことを。私が糸車に指を刺されないじゃないか。
なんとなく、ここにはもう指に刺さるような糸車は残っていない気がしたけれど、私は涙目でうろうろと山の間をさまよう。ないか、糸車、きっと1台ぐらい無事なのがあるんじゃないのか棘。ぐすっ。
あった。それもとびっきりぴかぴかの。これですよ、これ。見た瞬間、グッときた。
私は駆け足で糸車に近づく。そうして右手の人差指をゆっくりとその棘に
待て私、何かこう、これはとてもいけないことではないか?怪我をするとかではなくて、何か大変なことが起きたりするんじゃないか?
3人のおばさま方も言っていた。母さまは糸車に刺されて死んでしまったの、だから一生糸車に近づいてはいけないんだって。ほんまかいな。
がし。悩んでる間に勝手に伸びていた右腕を左手で懸命に止める。沈まれ私の右腕!
だからそう、これは糸車の棘に刺されてもなんでもないということを証明するための!行為なの!カガクですよこれからの時代。
しかし、たまらんですよ糸車の棘。なんかこう、そそるものがありますよね。あれで右手の人差指を刺したらきっとすごい幸せになれる気がする。
糸車の棘。いけない。お父様。糸車。わたしなまえはおーろら。とげ。いとぐるまのとげのみぎてのとげのひとさしゆびをとげのいとぐるまのわたしはいとぐ
そして私は糸車の棘にそっと指を押し当「そぉい!!」