診断を受けた訳ではなく、既に故人だから確かめようもないが、恐らく母は子供に対する精神依存を持っていたと思う。
10年もののうつを患っていた弟はその母と共依存状態となっていたのだろう。
とにかく遠くに逃げることだけを考えていた。結果、日帰りなどとても無理な程の遠方に仕事を見つけ、
以降、母がガンで余命数年であることが発覚するまで実家には近寄らなかった。
母が亡くなった後、どうなったかと言えば…
父は相変わらず仕事の多忙を理由にろくに家の口座管理すらせず、払える金はあるのにローンを滞納するざま。
めんどくさいことを全て母に押し付け、愛情と依存の区別がつかなかった母がそれぞ全て引き受け、結果として体を壊して死んだ。
その後、残った人間は成長するでなく自省するでもなく、義務を放棄し、あるいは対象を変えて依存を続けている。
俺は下手に実家に関わって母の身代わりをさせらるのはごめんだと、実家と距離をおき不干渉を貫いている。
母は苦労してきた人間だと思う。
親(俺から見た祖父)は酒を飲んでは暴力を振るうような人間だったと聞くし、
周囲の反対を押し切って結婚した最初の夫、俺の実父は俺が物心付く前に自殺している。
結婚の理由は金だった聞いている。時代が時代だ。女手一つで子供を育てるには厳しかったのだろう。
それでもよき母、よき妻として振舞おうとしていたことだけは間違いない。
少なくともと父をただのATMとみなしぞんざいに扱うようなことはしなかった。
それでも愛情は持ててなかったように見えた。
このまま疎遠になって互いに知らない間に死んでしまえばいいと思っている。
母の苦労を思えば申し訳ないが、俺は弟にも父にも愛情を持てないし、義務感も感じない。
身内をすら切り捨てる冷血については他ならぬ母から指摘されていたことでもある。