小学校低学年の頃、ボクらのクラスは小さい生き物を学校で飼ってもいいことになっていて、ボクも教室の後ろの棚の上にビンを置いてザリガニを飼ってたんですが、ある日学校に行くと何故かザリガニが消えていてちょっとした騒ぎになったことがありました。ザリガニがひとりでに消えるわけがないので誰かがどっかに持っていったのでしょうが、そんなことをするメリットもないのでよくわかんねえなあと思っていました。そしてその日の帰りの会の議題としてその件がのぼったのですが、何故か世論(クラスのみんな)は一人の男子を犯人扱いしだしました。ヨツツジくんという男の子でした。なぜヨツツジくんがみんなからそんなに責められているのかさっぱりわからなくて、ボクはぽかんとしていました。だってボクはヨツツジくんと仲が悪かったわけでもないし、なによりも一人放課後に残ってザリガニを連れ出すなんて目撃されるリスクを犯してまでやるような楽しいことじゃないと思ったのです。世論はますますヒートアップしヨツツジくんはザリガニを校庭にある池に逃がしたという疑いがかけられていました。ヨツツジくんはなぜか黙っていました。収集がつかなくなった頃、先生がヨツツジくんに「やったのか」と聞きました。するとヨツツジくんは小さな声で「はい」と言いました。彼は放課後にこっそりボクのザリガニを池に流したそうです。ボクにはさっぱり意味が分かりませんでした。そして急に怖くなりました。ヨツツジくんが犯人であるということよりも、なぜみんながヨツツジくんを犯人だとほとんど断定できたのか、そして犯行の状況まで知っていたのかということのほうがよっぽど恐怖でした。なにかボクの知らない情報網がどこかにあったのか、今になっては分かりません。ヨツツジくんはボク「ごめんなさい」と言って帰りの会は終わりました。ヨツツジくんになんでそんなことをしたのか尋ねると「ザリガニがかわいそうだったから」と言われました。そこにも違和感がありました。ヨツツジくんはどちらかというと生き物に対して残虐で、猫を放り投げてみたり、蜂を素足で踏んづけて得意がってみたり(それを食べてた)というようなキャラクターでした。そんなヨツツジくんから「かわいそうだった」なんて理由を聞いてもどこか気持ちの悪いものがありました。あの空間は自分の知らない世界に紛れ込んだような非日常で、いま思い出しても怖くなります。
2度、改行を入れるだろ? するとどうだ? 声が遅れて出てくるよ? 面白さの前に見難いってことだ。