2009年11月16日の日記

2009-11-16

http://anond.hatelabo.jp/20091116214510

これって生まれてから一度も子供を産みたいと思ったことがないからだろうか?

この全く関係ない文章を書かずにはいられないあたりに凄まじい「面倒臭さ」を感じる。

はてな女子たるものかくあるべし、という感じか。

http://anond.hatelabo.jp/20091116214510

オレも子供生みたいとは思ったことないなー

一緒だね!

http://anond.hatelabo.jp/20091116213108

きゃー、カッコいい! すてき!

一生ついていくわ!

http://anond.hatelabo.jp/20091116213108

男の収入を当てにしない女なんて全人口の0.01%くらいだろ。

もっと少ないかもしれないな。現実見えてなさすぎ。

貧乏事件

休日彼女から、「お昼は家でうどん茹でて食べる。お金ないからw」みたいなメールが来た。あまり深く考えることもなく、「俺も貧乏だから昼はカップラーメンだよw」と返した。

すると、急に真顔になったような感じで彼女は、「増田くんは慰めようとしてそういう返事をしてくれたのかもしれないけど、正直、増田くんが貧乏とか言うと、笑えない」というメールを送ってきた。

え? 俺、今、そんな変なこと言った? と慌てて電話で話を聞いたところ、次のようなところだった。

彼女は今資格試験勉強中であり、仕事に就いてはいるものの、将来への展望が明確に見えているわけではない。だから、(結婚とかを考える上でも)増田収入面を頼りにしているところがある。その増田が金がないとか言い出すと、将来がすごく不安になる。

うーむ、と僕は思った。

大した意味があって「貧乏だから」と発言したわけではなかった。男同士で話す時に「いやー、俺、金ないからw」とか言うのとおなじノリだった。

実際のところ、金はありますよ。なくはない。ただ、所詮中流階級、本当の金持ちではない。そんな程度の男が粋がって金があるというのもみっともないから言わないだけで。

そもそも、女が男の収入を頼りにする、というのがあまりぴんとこない。今の世の中、女性でも一生仕事をしようと思えば、(ある程度職業の限定はあるにせよ)できなくはないはずだ。特に彼女資格を必要とするような専門職であるわけだし。にも関わらず男の収入に頼るなんて、例えば、年取った時、「離婚したいけど自分一人では食っていけないからしかたなく夫と暮らす」みたいな状態になりかねんぞ、と思う(さすがに、僕が彼女に言うのはハイパー余計なお世話なので言わないけど)。

なんとなくもやもやしたまま、翌日、職場の後輩女子に顛末を話してみた。

「……というようなことがあったんだけど、○○さんだったらどうよ?」

すると、後輩女子はこう答えた。

「うーん、私が彼氏にそんなこと言われたら、やっぱ不安になりますね」

「そうなの? 今のこの職場だとさ、うなるほど金があるわけではないけれど暮らしていく分には、まあ、困らなくて、急にクビになるってこともないと思うけど……それでも不安になるの?」

「なりますね」

と後輩女子は少し考えながら頷く。

子供産むとか考えると、男の人の方に安定した収入がないと」

「そうなのかあ。男女共同参画社会はある程度実現したと思っていたのだが……」

「うちが、母親専業主婦ってのもあるかもしれないです。親がそうだと、やっぱそういう意識が刷り込まれてるっていうか。すぱっと変えられるもんでもないです」

「なるほど……」

本音を言えば、自分彼女も、後輩女子も、自立志向が強い人間だと思っていたので、このような発言はショックだった。しかし、特に利害関係のない二人がおなじようなことを言うのだから、たぶん、多数の女子がおなじような価値観をもっているのだろう(もちろん、二人とも、首都圏出身で、四大卒で、専門職に就く、あるいは目指していて、1982年生まれ、という偏りはあるのだけど)。

後日。再び彼女電話

「俺は心を入れ替えた。これからは金持ちぶる。ばんばん金を使う。俺に任せろ」

「……たぶん、根本的に勘違いしてる」

追記

トラバブコメありがとう。一通り目を通させていただきました。

レスすると必死っぽいので、これはリアクションした方がいいぞ! と思ったところに。

gouk 男女 子ども産むつもりなら、女は1年近く無収入の上に病院は実費。保育園NGだったら産んだ後も働けない。育児にも金はかかるし、復職しても結婚前と同等の給料が得られるなんて限らない←という現実、男はわかってる?

oya03 男女, 社会 ネタマジレス致しますが、相手の収入不安を覚えるって「本音は自立したくない」んじゃなくて「例え自立出来たとしても人生設計を考えると頼らざるを得ない」現実が未だ横たわっているってことです。

orangevtr 増田, ジェンダー 男女共同参画に対する考えが甘いと思う。でも独身時代ならこれくらいで普通なのかもね。

hanapeko gender, 労働 マジレスすんぜ!自立志向ということと、現実に自立するための障壁がないということは同じではないし、自立志向の強い女ほどガラス天井に心が折れて保守回帰っぽい言動をしちゃったりするんだぜ!

マジレスウェルカムです。正直言って、自分はそういう現実をあまり認識してないと思う。男が稼いで女が家を守るとか、そういう価値観は大嫌いだけど、そうせざるを得ない現実があるのだとしたら、今は社会に合わせていくしかないですね……

増田会社に、妊娠出産を経て会社に復帰してる女性ってどれだけいるの?

まず、僕自身、まだ社会人経験が数年なので、結婚妊娠休職出産職場復帰、というサイクルを最初から最後まで見たことがないのです。この辺が自分視野の狭さだなと、改めて思いました。

ただ、子供がいても総合職的に働いている女性の方は何名か知っています。

彼女資格試験に受かるかどうか自信ないんじゃない?

それは彼女も言ってました。受かったらあんま不安じゃなくなるかも、とか。

kiku-chan しかし、この増田はどう考えても優良物権だと思うんだぜ(安定した収入と、女性の就労への理解、他者の意見を聞こうとする姿勢)

tora_17 増田, 恋愛 良い文章。思慮深くわかりやすいしオチまでつけてる。増田の人柄が滲み出てるね。/彼女資格を取って軌道に乗ったらまた変わると思うけど。

褒められると素直に嬉しいです。超ありがとうッ!!

ミンスは人のためならず

こういうところも「キリングフィールド」のクメールルージュを彷彿させるんだよな。

クメールルージュにだって人格者はいただろうから。

「能なしでもできる」発言など仕分け人が謝罪

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091116-OYT1T01056.htm

菊田真紀子議員の今後は大丈夫なのだろうか?

こういう人が「総括」や「自己批判」の攻撃にあって政治家生命を断たれたら気の毒だ。

というか、友愛されたらシャレにならない。

こういう政治家もいるんだなぁ、と感心していたら。

小沢氏、外国人参政権で「韓国在日の要求が非常に高まっている」

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091116/stt0911161933006-n1.htm

大親分はもはや「日本人のための政党」という隠れ蓑はいらないと踏んだか。

徒にスクロールバーを長くさせるだけの迷惑極まりない掌編

ぱがん、と、乾いた音が耳を突いた。まどろみに埋もれていたわたしの意識が、急速に引き上げられていく。気だるげに開いた眼は、薄暗く静寂に沈んだログハウス天井を視界に捉えていた。

ぱがん、と、乾いた音が再び聞こえてくる。のっそりと上体を起こしたわたしは二段ベッドの上から室内を見渡し、まだサークル仲間の誰も彼もが目を閉じたまま微動だにしない様子を確認すると、がりがりと寝癖のついた頭を掻いてしまった。

もう一度眠ろうかと考えた。予定では、今日は引率している野獣の如き子ども達を宥めてオリエンテーリングに向かわせなければならなかった。下手に寝不足のまま参加してしまえば足手まといになってしまうだろうし、やつれて無駄に疲れてしまうことが目に見えて明らかだった。

やっぱり眠ろう。決めて身体を横たえて瞳を閉じる。小さく、仲間達の呼吸が小さく聞こえてきていた。意識はじゅんぐりと眠りの海に沈み始める。布団を引き寄せて、身体を小さく抱え込んだ。温もりが再度まどろみに沈んだ身体にとても心地いい。

ぱがん、と、三度あの音が鼓膜を振動させた。瞬間、わたしの瞼は何者かに支配されたかのように勢いよく見開かれる。まだ浅いところで引き上げられてしまったせいで、とうとう完璧に目が冴えてしまった。こんな朝っぱらからうるさいなあと少し腹が立ったわたしは、仲間達を起こさないよう静かにベッドから降りると、懐中電灯を持ってひとりログハウスの外へと足を向けてみることにした。

「……すごい」

扉を閉めると同時に、立ち込めていた噎せ返るような濃霧に、思わず呟いてしまっていた。少し息が苦しいような気がする。まるで水底に立っているかのようだと思った。山間だというのに立ち並んでいる木々の姿さえも確認できない。濃密な霧の姿に、わたしは途方もなく圧倒されてしまった。

霧はまだ陽も昇っていない早朝の薄闇の中、心なしか青白く色付いているように見えた。纏わりつく気配の中手を動かすと、水流が生まれるかのように顆粒が小さな渦を巻く。懐中電灯がなければとてもじゃないけれど踏み出せそうにはなかった。霧のせいで迷子になってしまう恐れがあったのだ。ともすれば壁だと錯覚してしまいそうなほどの密度を持った濃霧は、その奥底に圧倒的な幽玄を潜ませながら、音もなくキャンプ場を覆い尽くしていた。

そう。本当にあたりには何も物音がしなかった。鳥の鳴き声も、梢の囁きも、虫の音までも、一切が外気を震わせていなかった。空間を満たしているのは、どこまでも深い霧ばかりだ。昨日来たときには煩わしいほどに感じられた生き物の気配は、どれだけ耳を研ぎ澄ませてみても拾い上げることができなかった。

先ほどの言葉でさえも、口にした途端に濃霧に絡め取られてしまったのだ。生き物達の振動も、片っ端から霧に呑まれて分解されているのかもしれないと考えた。

ぱがん。辺りにまたあの音が谺した。随分近くで。あるいはとても遠い場所から。あの音だけは、やけに周囲に響き渡っている。まるで、霧があえて分かりやすくしているかのように。わたしは音がした方向に向けて懐中電灯の心細い光を放つ。

「誰かいるんですか?」

返事の代わりなのか、しばらくしてから再びぱがん、と音がした。導かれるようにして、わたしは濃霧の中に一歩足を踏み出す。一定の間隔で聞こえてくる音だけを頼りに、見通しの悪い、すでにどこにログハウスがあるかも分からなくなってしまった霧の中を進んでいく。

唐突に、光の円の中にひとりの老人が浮かび上がった。

思わず息を呑んで立ち尽くしたわたしの目の前で、どこか古めかしい翁のような雰囲気を纏った老人が手にした斧を大きく振り被る。耳に張り付いてしまったあの音を響かせながら、刃が突き刺さった丸太はぱっくりと左右に割れて落ちた。

「お早いのう」

こちらに振り返ることもしないで黙々と薪を割っていく作業を続けながら、老人が言った。

「音が聞こえましたから」

「ああ、そうじゃったか。……もしかして起こしてしもうたかな?」

言いながら老人は斧を振り被る。ぱがん。薪が割れる。

態度に少し気分を害したわたしは不機嫌を装って返事をした。

「まあね。うるさかったから」

「そうじゃったか。それは申し訳ないことをした」

と、老人はまったく反省したような素振りを見せずに口にする。なんなんだ、この人は。思ったわたしは口を噤むと思い切り睨みつけてやった。友達から、怖いと評判の眼差しだった。止めた方がいいよと。

けれど、老人は意にも介さない。丸太を立てて、斧を振り被って、割れた薪を横に積み上げていく。

漂い始めた沈黙と続く変化のない作業に、先に耐え切れなくなったのはわたしの方だった。

「あなたは、この辺りに住んでいるの?」

「ええ。長いもので、かれこれ三十年近くになりましょうかね」

「こんな朝早くから薪を割りにここまで昇ってくるんだ?」

今日はちょうど薪を切らしてしまっていての。寒いし、こりゃあ大変だということで、急いで準備に取り掛かったんじゃよ」

「でも、この霧だと大変じゃなった? よくここまで来られたわね。住み慣れた経験がものを言ったのかしら」

少し嫌味っぽく言うと、老人の口許に淋しそうな笑みが浮かんだ。その表情に、わたしは思わずどきりとさせられてしまう。老人は一度作業を中断させると、腰を伸ばしてから額に浮かんだ汗を拭った。

「深い、とてつもなく濃い霧じゃからなあ。あなたも驚かれたんじゃありませんか?」

「え、ええ。まあ」

「息が詰まって、溺れてしまいそうだと思った」

発言に、わたしは無言のまま頷く。老人は初めてこちらに目を向けると、とても柔らかく微笑んだ。穏やかな、それでいてどこか影の差し込んだ微笑だと思った。

「私も、初めてこの霧を経験した時にはそう思ったもんじゃからなあ。とんでもない霧だとな。けれども、いい場所だとは思わんかね。神聖な気配が満ち溢れているような気になる」

「神聖?」

突飛なキーワードに思わず声が口をついて出てしまった。

「ええ。ええ。そうじゃとも。この辺りには神聖な気配が満ち満ちておる。とりわけ、こんな濃霧の日にはの」

言って、老人は濃霧の向こう側を、その奥底を眺めるようにそっと目を細めた。

「……辺りを少し歩いてきてみたらどうですかな。きっと、とても気持ちがいいはずじゃよ」

しばしの沈黙の後、再びわたしの方を向いた老人は穏やかに微笑んでそう提案してきた。

「それに、もしかすると今日不思議なことが起きるかもしれない」

不思議なこと?」

繰り返すと、老人はこくりと頷いた。

「ええ。まあ、噂にすぎないんじゃがね」

そう口にして苦笑した老人に、わたしは最早当初抱いた不快感を消し去ってしまっていた。この人は少し仕事に集中していただけで、本当は親切ないい人なのだ。そう思うことで、優しくなれるような気がした。

「あんたなら、あるいは出会えるかもしれん」

口にした老人に、ありがとう、と礼を言うと、わたしは言われたとおり少し辺りを散策してみることにした。依然として先の見えない濃濃密密たる霧には変化がなかったものの、どういうわけか迷子になって帰られなくなる、といった不安は感じなくなっていた。ぱがん、と背後から断続的に薪割りの音が聞こえてきたからなのかもしれない。わたしの足はずんずんと霧の奥へと進んでいった。

どれほど歩いたのか、濃すぎる霧はわたしから時間感覚を奪ってしまったようだった。ぱがん、と聞こえる音の回数も、五十を過ぎたあたりから数えられなくなっていた。

一体、ここはキャンプ場のどの辺りなのだろう。どこをどう進んで、どこまでやってきたのかが分からなかった。劣悪すぎる視界は距離感覚も曖昧にさせてしまっていたのだ。加えてどういうわけか聞こえてくる薪割りの音はいつも同じ大きさだった。遠くもなることも、近くなることもないせいで、同じ場所をぐるぐる回っているような奇妙な感覚に陥ってしまっていた。

先の見えない霧の中、疲労にがっくり項垂れたわたしは、とうとうその場に屈んで、膝に手を置いてしまった。上がった呼吸を整えながら、もうそろそろあの老人の許へ帰ろうかと考えた時だった。

幼い笑い声が耳に届いた。

驚き、わたしは素早く顔を上げる。聞き間違いじゃないかと思ったのだ。引率してきた子ども達がこんな時間に外出しているはずがないし、そもそもその声がこの場所で聞こえるはずがなかった。

わたしは膝に手を突いたまま硬直して、こんなことはありえないと念じ続けていた。目の前にいる何かを幻だと理解しながらも、どこかでそうではないと信じていたかった。

再び笑い声が響く。たった三年だったにも関わらず耳馴染んでしまった、最後に息を吸う特徴のある、誰が笑っているのかを知っている声が谺する。

視界に映った霧の中で、その影は確かに楽しそうに口角を吊り上げていた。

「七恵なの……?」

呟くと、ひらりと身を翻して小さな子どもの姿をした影は霧の奥へと駆け出してしまった。

「待って!」

叫び、わたしは全力で影の背中を追う。疲れた身体の都合など知ったことではなった。実際、膝はすぐに悲鳴を上げ出し、やがて横腹も痛みを訴え始めた。いつの間にか木々の間に入ってしまっていたらしく、足場が安定しないのも苦しかった。

けれども、それでもわたしは身体に鞭を打った。影を追わなければならなかった。ここにいるはずのない、ましてやこの世に存在しているはずのない妹が、いま目の前を走っているのだ。どうして追わないことができよう。彼女に伝えなければならない言葉をわたしはずっと胸のうちに秘め続けていた。

掠れ始めた呼吸音と、立ち込める霧そのものが発しているかのように響く七恵の笑い声を耳にしながら、わたしはあの一日のことを思い出していた。決定的に何かが失われてしまった、手を離すべきではなかった日のことを。

あの日まで、わたしはお姉さんだった。三歳になったばかりの七恵を、監督し守ってあげなければならない責任があったのだ。

なのに。

先を行く七恵の影は、どうやら現状を鬼ごっこか何かと勘違いしているらしい、奇声のような歓声を上げながらするすると木々の間を縫い進んでいく。

「待って……待って、七恵」

もう手放さないから。絶対に、必ず握っておくから。

――だから、もうどこへも行かないで……!

ぎゅっと閉じた瞼の裏側に、あの日の光景フラッシュバックする。病床に臥していた祖母のお見舞いに向かっていたのだった。病室でわたしは暇を持て余していた。近くにいるように母に言われていたのに。七恵を連れて院外へ出てしまった。

近くにあった商店街。立ち止まり見惚れてしまった文房具店。陳列されたいろいろな文房具は、小学生になったばかりだったわたしの目に、キラキラ光っているように見えた。どれもこれも可愛くて、熱中してしまた。

握り締めていたはずの七恵の小さな掌の感触。いつの間にか、なくなってしまった感触。

生々しく思い出せるが故に、後悔は杭となって打ち込まれていく。鈍痛は、いまなお血と共に滴り続けている。槌を振るにやけ顔の罰は、愉快そうにこう告げてくる。

「おいおい、なにを寝ぼけたことを言ってるんだ。それだけじゃないだろう。お前の罪はそれだけに留まらなかったはずだ」

そうだ。そのとおり。文房具から目を上げたわたしは、隣に七恵の姿がなかったことをかなり早い段階で認識していた。その時点でわたしが探していれば、もっと違った現在があったかもしれなかったのだ。

幼かった七恵。まだ三歳になったばかりだった。生意気で、なんでも真似して、両親の愛情まで奪っていって――。わたしは邪魔だったのだ。幼い独占欲は、妹の存在をうっとおしく思い始めていた。

わたしはあの時、本当は喜んでいたのだ。疎ましい七恵がいなくなったと。人通りの多い商店街の中で、これでようやく好きなだけ文房具と向き合えると思ってしまっていた。

失った感触。温かくて柔らかくて、小さかった脆弱な掌。

両親は血相を変えてわたしたちを探しに来た。どうして急にいなくなっちゃったの、と、鬼のように母さんに怒られた。それから、父さんが言った。

「七恵はどうした」

ななえはどうしたななえはどうしたななえはどうした……。

わたしは言葉を何度も頭の中で転がした。意味を理解しようと努めた。そして、同時にかっと全身が暑くなって、唇が動かなくなってしまった。

「ねえ、七恵は。七恵はどこに行ったの?」

怒ったままの鬼の母さんまでもが々ことを口にする。わたしは俯いた。父さんは周りを見渡しながら困ったなと呟いたはずだ。探してくる、と駆け出していったから。

「どうして勝手に抜け出したりしたの」

母さんはヒステリックに叫んでいた。思えば、あの時すでに最悪の事態を予想していたのかもしれない。当時、近くの町で未解決の誘拐事件が発生していたのだ。高圧的に、そして混乱しながら怒鳴り散らす母さんの声を、わたしは俯いたままぐっと唇を噛んで耐え忍んでいた。

罰が愉快そうに口にする。

「そうだ。思い出すんだ。お前の罪がなんなのか。本当に最悪ないことはなんだったのかを」

母に怒られながら、しかしわたしは七恵の手を離してしまったことを後悔していたわけではなかった。むしろ、七恵を恨んでいた。勝手にいなくなって、そのせいでわたしが怒られてしまったのだと、やっぱりいらない奴だと考えてしまっていた。

だから、わたしは泣かなかったのだ。いくら怒られても、いくら詰問されようとも。そして、時が経つにつれて本当に泣くないようになってしまった。

記憶は正確に当時の状況を把握し続けている。行き交う人波の中から戻ってきた父の表情。分からない、との呟やきを耳にした後の母のパニック。宥める父と泣き崩れた母の姿。ようやくわたしにも事態の深刻さが理解できかけてきたのだった。両親が人目も憚らず取り乱す姿なんて後にも先にもこの一件以外に見たことがなかった。

警察への連絡、掴めない足取り、過ぎていくだけの日数、憔悴していく両親。わたしは何も言えなかった。言えなくなってしまった。そもそも言う権利など、端から存在しなかったのだ。

誘拐事件への疑い、寄せられた怪しい人物の目撃情報。七恵は、商店街の出口付近で、若い男に手を引かれていたのだという。

そしてその翌々日。

七恵は、近くの池に浮かんでいた。寒空の下、下着姿でぼんやりと漂っていた。性的暴行を受けた末に、死体の処理に困った犯人に投げ捨てられたのだった。その後、連続誘拐犯の若い男は逮捕され、死刑が決まった。

けれども、もうなにも蘇らなかった。わたしのせいでわたしは、わたしの家族は、そして七恵は、どうしようもなく損なわれてしまった。もう二度と元へは戻れない。失われた存在の代償など、七恵本人以外にありえるわけがなかった。

足がもつれる。転びそうになってしまう。前を向いて、歯を食いしばり、泣き腫らしながらわたしは走り続けている。影に追いつかなければならなかったのだ。あの掌を握り締めることだけが、わたしにとって可能な唯一の贖罪だった。

唐突に影が急に立ち止まる。限界を通り越した身体で追いすがるわたしに振り向くと、にこりと微笑んだ。表情など見えないはずなのに、なぜか笑っていると理解できた。同時に、迎えなければならない別れの予兆も感じ取れた。

「な……なえ……」

息も絶え絶えにそう呼びかける。七恵はどうしてわたしが苦しみを抱いているのか分からないといったような顔をして、首を傾げる。

「ごめん、ごめんね、七恵。わたしが手を離したばっかりに、わたしはあなたを死なせてしまった」

そう、全てわたしのせいなのだ。幼いわたしの自分勝手な考えが、全てを反故にしてしまった。用意されていたはずの七恵の未来も、温かな家族の団欒も、些細な笑い声さえも、残された家族から損なわせてしまった。

崩れ落ちるようにして膝を突き、両手で落ち葉を握り締める。瞑った両目からは、涙が零れ落ちていった。

「ごめんなさい。ごめんなさい」

この言葉しか口に出せないわたしの肩に、そっと手が触れたような気がした。

顔を持ち上げる。霧の中で七恵は満足そうに笑っている。影の腕が動いて、大きく左右に振れた。口が動いたのが見えなくても分かってしまった。

さよならの合図だった。永遠の別れ。奇跡は二度とは起こってくれないだろう。

焦ったわたしは手を宙に伸ばす。待って。行かないで。もうどこにも。この手から離れないで。そうじゃないと帰れなくなってしまう。あなたは二度と帰られなくなってしまう。

膝を立てて懸命に、力の入らない足を遠ざかりつつあった影に踏み出そうとした瞬間だった。霧の向こう側から、鋭い陽光が網膜を貫いた。

そのあまりの輝きに堪らずわたしは目を閉じる。瞬間、周囲を穏やかな風が通り抜けていった。柔らかな、優しさに満ち溢れた風だった。

ゆっくりと瞼を開く。あれほど濃密で深かった霧がすっかりと薄くなり始めていた。見れば、手を突き出した先の地面は、すとんと途切れてしまっている。山の断崖に出ていたわたしは、昇り始めた太陽に照らされた雲海を、裂け分かれていくようにして音もなく消えていく霧の姿をじっと目に焼き付けることとなった。

壮麗な光景言葉を失っていた最中、そよいだ風の合間に幼い声を聞いたような気がした。バイバイおねえちゃん、と聞こえたその声は、紛れもなく妹のそれであり、もう決して届かなくなってしまった彼女のことを思ってわたしは再び涙を流した。

泣き疲れて適当に歩いていたせいで、どこをどう帰ってきたのか分からなくなってしまった。気がついたとき、わたしは再びあの老人を視界に捉えていて、何かに操られるかのようにして近づいていったのだった。

老人は相変わらず薪割り続けていた。

「どうじゃった。なにか、起きたかね」

斧を片手に顔を上げないまま、そう口にする。如実に現実感が蘇ってきて、わたしはついさっき体験した出来事を思い出し、それからそっと笑顔になって口を開いた。

「ええ。とても素敵な出来事でした」

もう二度と合えない相手と、たとえ影だけだったとしても会うことができたのだ。伝えられなかった想いも、伝えることができた。一方的ではあれど、わたしにとっては確かに素敵な体験だったのだ。

「……前を向けそうかね」

老人の問い掛けに、やはりこの人は霧の山で起きていることを正確に把握しているのだなあと理解した。わたしはくしゃりと表情を崩して、どうでしょうと口にする。

「また会いたくなってしまうかもしれません」

言葉に、老人は少し困ったような笑みを浮かべた。ぱがん、と薪が割れる。

「あんたも過去に囚われてしまいますか」

わたしは何も答えない。額を拭って、老人は斧を振り下ろす。ぱがん、と薪が割れる。沈黙が二人の間に染み込んでくる。

「かく言う私も、この山の霧に魅せられてしまったひとりでね」

不意に口にして、薪を割る手を休めた老人は恥ずかしそうに頭を掻いた。

「失った日々を前にしてからというもの、ここから離れられずに、こうして樵のような真似事をしておるわけなんじゃよ」

「ご家族の誰かを?」

自嘲気味に笑った横顔に、失礼とは承知で訊ねたわたしに対して、老人は素直に頷いて答えてくれた。

「妻と娘をね、冬場の火事でいっぺんに亡くしてしまったんじゃ。あの冬はとても寒くての、ストーブは欠かせなかった。今思えば不幸なことに違いないのだろうが、ちょうど私は出張で家を離れていてのう。事のあらましを聞いて駆けつけてみれば、二人は見るも無惨な姿に変わり果ててしまっていた。面影すらなかったんじゃ。熱によって筋肉が収縮したんじゃろうなあ、口だけぽっかり開いていて並んだ歯が見えるんじゃよ。でも、それだけじゃ。身体は顔も全身も真っ黒に焼け爛れてしまっとってな、まさしく消し炭で、私は一瞬妻と娘じゃない、他の誰かが死んだんじゃないかと思ってしまったんじゃよ」

進んで訊いたくせにどうとも反応することができず、わたしは目を伏せて小さく頭を下げた。老人は遠く、消えつつある霧が覆い隠してしまった妻子を見つめるかのようにして目を細めた。

「この山はの、異界と繋がっているんじゃよ。もしくは、壮あって欲しいと心のどこかで願う者に山が望むものを与えてくれる。けれども、だからこそあまり長居をしてはならないんじゃよ。私は運よく山に管理者として認めらはしたが、私以外にここで長居をして無事にいられた者は他にはいないんじゃ。皆、山に呑まれてしまった。霧の奥へと誘われて、とうとう帰ってこなかった」

その淋しそうな物言いに、わたしは抗うようにして微笑を湛えた。

「それでも、またいつかこの場所に来てもいいでしょうか?」

驚きに目を見張って振り返った老人が、わたしの表情に何かを見たようだった。柔和に顔をほころばせるとそっと口を開いた。

「……いつでも来なさい。ここはどんな時でもちゃんとこのままであるはずじゃからのう」

「はい」

確かな返事をして背後に振り向く。木々の間を縫って差し込んできていた朝陽に目を細めた。鳥が羽ばたいて空を横切っていく。甲高い鳴き声が響き渡る。存外近くにあったログハウスの中から、いなくなったわたしを心配したらしい大学サークル仲間達が顔を出し始めていた。

「行かなくっちゃ」

呟きに、老人は力強く頷きを返してくれる。

「またいつか」

「ええ。またいつか」

言うと、老人は割り終えた薪をまとめて背中に担いだ。木々の間に分け入っていく背中を見えなくなるまで眺めてからわたしは踵を返した。

帰るべき日常へ、あるべき仲間の場所へと、わたしは歩を進めた。

自称病的無敵の人にはうんざり

うちの会社にも病的無敵の人がいる。

だがどう見ても自称。なぜならいつもは遅刻や欠勤なのに、飲み会のときにだけしっかり出勤する。

そして嫌な仕事を振られそうになったら休む。(有給はとっくに使い切って欠勤)

なぜクビにならないのか本当に不思議だ。

Twitter自分がいかにかわいそうかアピールするのももうやめてくれ。

周りの人間限界に達している。もう何でもするのでお願いだから休職、もしくは退職してください。

http://anond.hatelabo.jp/20091106183734

元増田です。

>覚えてたら、思い出を共有してあげればいいし、覚えてないなら単に「物が大事」なだけで、

元カノとの思い出が大事なわけじゃないって確認出来るじゃない

一度、掘り下げて聞いてみようと思います。

その後、自分が感じたことを自分で租借してみようと思います。

以前の彼に、元カノの話を振ってみたら満面の笑顔で思い出話をされたことがあるので

すこし怖いですが、しっかりと聞いてみようと思います。

最初の書き込みの後に、もう一度「以前、元カノの持ち物で嫌な思いをした」と伝えましたが

こんどは別の元カノに貰ったものを身に着けてきて「これは前前の彼女のだから」と言われてしまいました orz

別の方がおっしゃるように http://anond.hatelabo.jp/20091106182655

はっきり言わないと通じないようなので・・・

そういう性格だからといって

慣れるわきゃないし

慣れなきゃいけない理由もない

一方だけが我慢する関係は成り立たない

破綻させた方がよい

http://anond.hatelabo.jp/20091116195947

人生相談がてら街の占い師に行く気力があるなら試しに行かれてはどうでしょう

何もする気が起きなくて、苦しくてどうしようも無い時は心療内科に行くことをお勧めします。

重度の鬱は薬によらないと治らないと聞きました。むしろ、薬で治った人を知っています。

何よりも自分に合った主治医を見つけるのが一番だと思います。

実質GDPが年率4.8%成長だって?

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091116AT3S1600I16112009.html

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091116AT2C1600D16112009.html

日経は一応評価しているようですが、名目GDPマイナス成長・・・つまり需要がなくなって物価が下落した結果、実質GDPでみると成長しているように見えてるだけ・・・

あいつらはものすごく悪質なのに理解していない人もいる。

実際に嫌がらせを受ける立場になってみればよくわかるようになると思う。

http://anond.hatelabo.jp/20091116202842

複数のサイトで同時公開が一番見てもらえる。読者の質を期待するなら、小説サイトmixiコミュを一押しする。

http://anond.hatelabo.jp/20091116194906

総勢約80人が約1時間かければできる程度のことだったのであれば、政治家全員要らなくないか? と思うんですが。

http://anond.hatelabo.jp/20091116194934

なんでだろうなあ。

まず知らなさすぎるんだよな。経営理論を。

知らないから勘と経験でやっちゃう。そのうち歳食って頭固くなって「勘と経験」に反するものを受け入れなくなる。


なぜ知らないのか?

教えていないからか?それはあるかもしれない。

戦略的に考える」なんていうことは学校教育のどの場面でも全く教えられないだろう。

むしろそういう思考を「小賢しい」とか「ずるい」とか言って排除する傾向すらある。

汗水たらして愚直に(何も考えずに)やった方が偉いということになっている。


なぜそうなっているのか?

文化的なものがあるのかもしれない。あるいは戦後アメリカからそう仕向けられた?それとも国内の権力者か?

http://anond.hatelabo.jp/20091116191713

身近に元増田にすごく似た人間を知ってるけど

正直、"信頼"を取り戻すのは無理だと思う。

取り繕ったって、無理だよね?

「そういういい加減な人間なんだ」って、知ってもらうのが一番。

というか、遠方の友人は、元増田のそういう部分を知らないまま今まで過ごしたんだろうか?

だったら、”親友レベルで仲良くもなさそうだし、どうせ遠方だし、もうどうでもいいかも。

そして、今彼(もしくは彼氏じゃない?へたすりゃ女?)も、元増田のいい加減な部分を知らなかったんだから、

こっちもそれほど深い(長い)付き合いじゃないって事だ。

これからも付き合っていくつもりなら、知ってもらって良かったじゃん?

絶対に”二度目、三度目”はあるよ。

http://anond.hatelabo.jp/20091116202543

愛が何なのかわからない人は

何を信じればいいのかわからなくて困るよね。

国家公務員法 第100条

第1項 「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と定められている。違反者は最高1年の懲役又は最高3万円の罰金に処せられる。

地方公務員法 第34条

第1項 「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。」と定められている。違反者は最高1年の懲役又は最高3万円の罰金に処せられる。

独立行政法人通則法 第54条

第1項「特定独立行政法人の役員(以下この条から第五十六条までにおいて単に「役員」という。)は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。」と定められている。違反者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。非特定行政法人の場合も個別法で守秘義務が課せられている場合が多い。

国立大学法人法 第18条

(役員及び職員の秘密保持義務)第18条 「国立大学法人の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。」と定められている。違反者は最高1年の懲役又は最高50万円の罰金に処せられる。

弁護士法 第23条

秘密保持の権利及び義務)第23条 「弁護士又は弁護士であつた者は、その職務上知り得た秘密を保持する権利を有し、義務を負う。但し、法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」と定められている。

郵便法 第8条

第1項 「会社の取扱中に係る信書秘密は、これを侵してはならない。」

第2項「郵便の業務に従事する者は、在職中郵便物に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」と定められている。第1項の違反者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。第2項の違反者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる。

電気通信事業法 第4条

第1項 「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。」

第2項 「電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。」と定められている。第1項の違反者は最高2年の懲役又は最高100万円の罰金に処せられる。

電波法

第59条 「何人も法律に別段の定めがある場合を除くほか、特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受してその存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない。」

109条 「無線局の取扱中に係る無線通信秘密を漏らし、又は窃用した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」第2項 「無線通信の業務に従事する者(無線従事者)がその業務に関し知り得た前項の秘密を漏らし、又は窃用したときは、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」

技術士法 第45条

技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする。」と定められている。違反者は最高1年の懲役又は最高50万円の罰金に処せられる。親告罪

刑法 第134条(秘密を侵す罪)

第1項 「医師薬剤師医薬品販売業者、助産師弁護士弁護人公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」

第2項 「宗教祈祷若しくは祭祀の職にある者又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときも、前項と同様とする。」

マナカナ劣化しすぎじゃね?

ブスな上に老けすぎだろ、あれは

初恋が至高であるかのように言われるのは

「疑わないから」だと思う。

そう考えると、昔の人は恋に関しては

「信じる」事よりも「疑わない」事にさらに価値があると判断している。

番組の人が機嫌が良かったのは

俺がどうこうではなく

放送作家の人がものすごくフォローしてくれたから。

そんな気がする。というか他にも見えない所で色々な人にフォローされているような気がする。

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