近頃は自分の創作活動に忙しくて、本をなにかと積みがち。まさか、BL本買って積むなど……。という訳で、今回のBL感想文は一つだけ。
旋盤工のトラヴィスは、通勤途中にとある美しい男に目を留めた。その男はいつも家のポーチに座ってギターを弾いている。トラヴィスはその男のことをひと度意識してしまった途端に片時も思わずにはいられなくなってしまう。
そしてトラヴィスは九月のある晴れた金曜日、男に話しかけた。男はドリューという名前で、失語症を患っており、一言も話すことができなかった。だが、全く話せないのに豊かな表情と仕草で思いを語ることができるドリューに、トラヴィスは惹かれていく。
いい話ではある。けど、エンタメよりも文学に寄っているせいで、なんか微妙なんだよなぁ……と思ってしまう。ついアメリカ文学の大御所と比較して、なんだかなぁと思っちゃうんだよなぁ。ヘミングウェイとかレイモンド・カーヴァーとか、ホラーじゃないときのスティーヴン・キングとか。もしかすると、アメリカ文学としては型通りなのかもしれないなあと思う。船戸与一の『炎、流れる彼方』で真似された、なんとなくアメリカの底辺の悲哀っぽい雰囲気的な。
正直、BLというかM/M(男同士のカップルの恋愛)小説であること以外には読みどころがないと思った。
日本の商業BL小説はなんかどれも似たり寄ったりだしレベルが低くてつまらないと思った人が、海外BLに面白さを求めてこれに飛び付いちゃったらより一層がっかりするからやめときって思う。
アメリカっぽいBLが読みたいんだったら、漫画の『親愛なるジーンへ』とか『遥か遠き家』とか『ミッドナイトレイン』とかでいいんじゃないだろうか。
商業BL小説にクオリティを求めるとしたらこの『Speechless』は日本BL小説界の傑物 凪良ゆう先生の『美しい彼』の足もとにも及ばないので、別に読まなくていいと思う。まあ、萌りゃあ何でもいいんだよ! って人には良いかもしれないが。