免許取得後、プライベート用にと買ったが車庫にしまいっぱなしだから、と祖父が車をくれた。光に当たると濃くパープルに反射する、落ち着いた色をしたワゴンRだった。
年数にしては走行距離が少ない、といろんな人に言われた。車庫から出たとしても祖父とはあまり遠くまでは出掛けなかったのだろう。
内装は一部がブラウンにカスタムされていて、おしゃれだった。カーナビはついていなかったけれど、スマホもあるし、特に不便はしなかった。
出先の駐車場でぶつけた、家の車庫に入れるときにこすった、初心者というのもあり、傷はそこそこつけてしまった。何度か工場で直してもらった。
運転は楽しかった。次第に遠くまで行けるのが良かった。ひとりでどんどん遠くまで。
車をもらった当初、親と同居していたのだが、折り合いが悪く、ことあるごとにひとりでドライブがてら気分転換をした記憶がある。夜のドライブも多かったし、たまに助手席に愛犬も乗っていた。犬は、窓から鼻先を出して、風を感じるのが好きだったようで、今でも一緒にドライブするときは、平気そうなところでは窓を開けてあげている。
アルバイトへの通勤も車にした。職場が楽しかった。家に居たくない分職場にどっぷりだった。
フリーターなので今までいろんなアルバイトを経験してきて、その中の多くは愛車ちゃんとともにある。いろんな職場の、いろんな従業員駐車場に停まったね。
はじめての恋人ができたときも愛車ちゃんに見守られていた。なんなら車の中で告白をしたような気がする。恋人といろんなところに、車で出かけた。私が運転することもあったし、恋人が運転してくれることもあった。愛車ちゃんからすると、どっちの運転の方が良かったなーとかあるのだろうか。
たわいない雑談やひとりごとをうんと聞いてくれたね。車の中のBGMはずっとアニソンばかりだったね。気に入ってた曲とかあった?
スピードを出すことが楽しくなってた頃もあった。
突然前の車に煽られた時もあった。
今まで使ったことのなかったボタンやレバーの使い方を車に詳しい同僚に教えてもらったこともあった。
名前が、ワゴンR スティングレイ だと言うことを教えてもらってからは、スティングレイちゃんと呼んでいた。
定員まで乗せてラーメン屋に行った。
後部座席を全部倒して、引越しの荷物を積んで運んだね。何往復も。
炎天下の夏は灼熱の車内だった。
雪の降った時は、一瞬ハンドルが取られてヒヤッとした時もあった。
祖父が倒れたと聞いた時、先に病院向かった両親を追って、弟を乗せて病院まで運転した、気が気ではなかったがなんとか無事に着いた。
祖父が亡くなってからは、スティングレイちゃんは祖父の形見のようで、大事にする気持ちがより一層強くなった。
車には詳しくないし、そんなにお金もなかったから、整備とか交換パーツとかにあまりお金はかけられなかった。最低限しかしてあげられなくてごめんね。
洗車ももっとこまめにしてあげたら良かったな。
長い間、私をいろんなところに連れて行ってくれてありがとう。いろんな景色を見せてくれてありがとう。
今までお世話になりました!!!
次はアルトワークスにしなよ!