2018-06-03

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今回はモアイ

標本教室四季賞2017冬 佳作)

要人である生物教師と、転校生女子は、それぞれ独自性癖を持っている。

この二人が出会い、“独特な対話”を繰り広げることで、互いの漠然とした疑問や悩みが収束していく、みたいな話。

生物教師の語る独自生命哲学、それによって少しだけ救われる女子の、“皮”を介した抽象的な心理描写には拘りを感じる。

時折、骨を愛好する生物教師目線によって、生命に対する視覚表現曖昧にさせる演出も利いていると思う。

ただ、話を混乱させるデメリットもあるから、このあたりは良くも悪くも、だね。

ストーリーは、大半は生物教師の語りで持たせているだけで、やってることの割に盛り上がりがないというのも気になる。

そのせいで、メタ的に見れば作品内における解答を、漫然と羅列しただけにも見えたかな。

亀は空を飛ぶ(四季賞2017冬 佳作)

主人公は「空を飛ぶ巨大な亀」が見えるのだが、これは彼にしか見えない。

そんな主人公の半生が描かれるのだけれども、ある意味では展開に驚くね。

話はミステリー方向には行かず、あくま主人公個人問題終結している。

あの手の、あっと驚く系のストーリー漫画に耐性ができてきた身としては、変に読者を騙してやろう、驚かしてやろうみたいな姿勢で描いていないのは個人的には好感持てる。

「空を飛ぶ巨大な亀」が妙に写実的デザインだけれども、かえって浮いているか存在感が増しているのもいいね

作中の「空を飛ぶ巨大な亀」が何を暗喩した存在なのかは明言されていないけれども、漠然とは理解できる範疇だと思う。

本作は「空を飛ぶ巨大な亀」を「他人理解されないが、自身だけ執着している何らかのもの」に置き換えても話はほぼ成立するから、要はそういう感じの話なんだろう。

逆にいえば「空を飛ぶ巨大な亀」に大した理由はなく、話としてはちょっと解体すれば全容がほとんど見えてしまうので話作りとしては肩透かしというか、陳腐な印象を与えるかな。

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