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2009-05-20

システムはだいたいこういう流れでプロジェクトが進む。

http://anond.hatelabo.jp/20090519230327

とりあえずプロジェクトマネージャが作りたいシステムを語る。酒の席だったりする。

それを何となくSEに伝えて営業用資料を作る。この過程で何度も何度もあーでもないこーいうつもりでもないと言いながらもできあがる資料は抽象的でなんとなくそれっぽい絵とどこかで見たようなシステムに独自っぽい名前を付けてるだけのすっからかんペラい物になる。本音を言うと「Amazonを作る」と言われる方が楽だ。「作りたい本人が説明できない、今までにないような独自のシステム」を作る事になるとバグとか糞とか以前に完成しない。

そのペラい資料をもって営業に行くがすんなりは決まらない。この間はいい感じだねって言ってたじゃんって展開も。そのまま下にも同じ事を言われる。

決まらないがとりあえず作り始めてとデザイナとプログラマに投げられる。とりあえずジャンル名くらいしか決まっていないので色々聞きながら作ってみる。もちろん面白いとかつまらない以前の内容になる。(十字キーリストが動くだけレベルとかシステムを一個だけそれっぽくしてるとか)

開発が始まると政治的なパワーバランスなどの都合により今まで作っていた何物かはゴミ箱に行くことに。でも「もう半分くらい作ったんだから簡単にできるハズ」等と言われる。ウィンドウアプリだったハズが携帯WEBアプリになったのに。(極端だけどハード変更はザラ。あまり大きな問題はない)

SEはまた初めと同じように内容を伺う。日を跨ぐと違うことを言うので出来るだけ素早く箇条書きにしてる。なかなかまとまらないがデザイナとプログラマはまた何かを作り出す。何を作るかは分からないが何となくキャラとか背景の枚数を妄想して分担表とかをつくる。プログラマも仮想工数表を作る。

放っておくと大量のデータ、大量の画面、大量の帳票、仕様バグ、労力の割に効果があまりないような操作、壮大な計画がブチ上がってくるので必死で止める。

仕様バグ仕様見ただけで分かるような無茶な物のこと。例えば100個のレコードから3つを合成してすべて違うテーブルが生成されて全部に名前と効果と属性が付くとか。16万通りもある事を理解できていない)

SEはこの段階で死にそうになっている。一応存在するSEの締め切りが迫ってくると当然毎日徹夜して仕様書を作成していくのだが、なんど書き直しても「つかえない」「ここはこういうつもりじゃなかった」「字にすると便利そうに見えないから名前を考えて」「(仮の)絵が気にくわないからインスピレーションが~」「やっぱこうの方がいい」「昨日いいこと思いついた」等の必殺技返り討ちにされる。仮絵をデザイナに描いて貰っている場合はデザイナに頭を何度も下げに行く。SEの締め切りはもちろん守れられない。その分のしわ寄せはデザイナとプログラマがかぶることになる。毎日毎日両部門に目に隈を作ったSE勢が「間に合わなくて済みません」と謝っている。ただしデザイナもプログラマも怒らない。SEが遊んで遅れてる訳じゃないし。一緒に仕様固めを手伝う。

何となくあがってきたSE仕様を眺めながら作る。ただし細かいことは何にも書いてない。オプション画面と一言だけ書かれているならましで、オプション画面の存在が伝えられていない事もザラ。その当りは必要そうな設定項目をプログラマが洗い出してデザイナが全体の空気を読んだ画面デザインを構築して己のインスピレーションを信じて勝手プログラミングする。とりあえず作った物を見せると「俺の指示と違う」等と言われることが多い。指示なんかないのに。ただしこれがそのまま使われることも良くある。

開発が中盤に入る頃には仕様がしっかり上がって……いない。絶対。時間だけが無情にもすぎるが未だ路線が定まらない。分からないところは逐一聞きながら作る。聞かないでも作る。運が悪いと何故聞かなかったと言われる。デザイナはひたすらリテイクを食らう。コーポレートカラーと合わないとかこのボタンだけ浮いているとか。そもそもおれ孫請けだからリリースする会社がどこか知らないし。絵の枚数が気が付くと増えている。色数指定が破られている。容量が足りなくなる。プログラムで容量を何とかしろと言われる。もうたっぷり圧縮してる。

開発終盤。締め切りに間に合わない事が確定的になってから仕様をとりあえず削ってみる。最初からそれはいらないと言い続けた場所を削るがプロジェクトマネージャは不満顔。最初から入れなければもっと早かったのにと毎度毎度言い続けてるが変わらない。デバッグ期間は短くてもいいとか言い出す。それで前もバグを出しただろうに。やっぱりあそこが気に入らないから変えてとかこの期に及んで言う。デザイナは絵1枚当たり作業時間が割とはっきりしているのでギリギリまでリテイクされる。SEテストデータを必死で打ち込む。「レスポンスが悪い。調整してないのか」とか言われる。その時間はお前が削ったんだ。プログラマは頻繁なデータ差し替えをしながらバグを潰していく。何度言ってもデータ差し替えはすぐ出来ると思われている。そろそろセレロンはやめて欲しい。デザイナもメモリが足りないので勝手に増やしている。バグは無理矢理潰す。みんな死にそうな顔をしているが激太りもしてる。

リリース前にプロジェクトマネージャが偉そうな顔して雑誌ブログコメント

リリースして失敗プロジェクトと言われる。世間一般的にバグれば販売元とプログラマのせいにされて(予算を出さなかったから、プログラマミスをしたからと思われている)つかえなければディレクタプロジェクトマネージャが批判される。(世間の(俺の)便利だと思っていることを理解できていない!とか)このために軸のぶれているプロジェクトマネージャやディレクタは上がってきた物が便利でないと感じると仕様変更ガンガン入れてくる。たとえバグっても内容が悪くなければ叩かれるのは自分じゃないもんね。時間と金をもって来ないのにこれをする人が時間無駄遣いさせる。プログラマバグを出したくないので仕様変更が出ないよう出ないよう事前に釘を刺しに行きたがる。

終わった頃には人数が減っている。そして募集が掛かっているw

2009-05-19

糞ゲーはだいたいこういう流れでプロジェクトが進む。

とりあえずプロデューサが作りたいゲームを語る。酒の席だったりする。

それを何となくプランナに伝えて営業用資料を作る。この過程で何度も何度もあーでもないこーいうつもりでもないと言いながらもできあがる資料は抽象的でなんとなくそれっぽい絵とどこかで見たようなシステムに独自っぽい名前を付けてるだけのすっからかんペラい物になる。本音を言うと「ポケモンを作る」と言われる方が楽だ。「作りたい本人が説明できない、今までにないような独自のゲーム」を作る事になるとバグとか糞とか以前に完成しない。

そのペラい資料をもって営業に行くがすんなりは決まらない。この間はいい感じだねって言ってたじゃんって展開も。そのまま下にも同じ事を言われる。

決まらないがとりあえず作り始めてとデザイナとプログラマに投げられる。とりあえずジャンル名くらいしか決まっていないので色々聞きながら作ってみる。もちろん面白いとかつまらない以前の内容になる。(十字キーで絵が動くだけレベルとかシステムを一個だけそれっぽくしてるとか)

開発が始まると政治的なパワーバランスなどの都合により今まで作っていた何物かはゴミ箱に行くことに。でも「もう半分くらい作ったんだから簡単にできるハズ」等と言われる。DSのARPGだったハズがPSPSRPGになったのに。(極端だけどハード変更はザラ。あまり大きな問題はない)

プランナはまた初めと同じように内容を伺う。日を跨ぐと違うことを言うので出来るだけ素早く箇条書きにしてる。なかなかまとまらないがデザイナとプログラマはまた何かを作り出す。何を作るかは分からないが何となくキャラとか背景の枚数を妄想して分担表とかをつくる。プログラマも仮想工数表を作る。

放っておくと大量のアイテム、大量のイベント、大量のモンスター仕様バグ、労力の割に効果があまりないような話、壮大な計画がブチ上がってくるので必死で止める。

仕様バグ仕様見ただけで分かるような無茶な物のこと。例えば100個の素材アイテムから3つを合成してすべて違うアイテムが錬成されて全部に名前と効果と絵が付くとか。16万通りもある事を理解できていない)

プランナはこの段階で死にそうになっている。一応存在するプランナの締め切りが迫ってくると当然毎日徹夜して仕様書を作成していくのだが、なんど書き直しても「つまらない」「ここはこういうつもりじゃなかった」「字にすると面白そうに見えないから名前を考えて」「(仮の)絵が気にくわないからインスピレーションが~」「やっぱこうの方がいい」「昨日いいこと思いついた」等の必殺技返り討ちにされる。仮絵をデザイナに描いて貰っている場合はデザイナに頭を何度も下げに行く。プランナの締め切りはもちろん守れられない。その分のしわ寄せはデザイナとプログラマがかぶることになる。毎日毎日両部門に目に隈を作ったプランナ勢が「間に合わなくて済みません」と謝っている。ただしデザイナもプログラマも怒らない。プランナが遊んで遅れてる訳じゃないし。一緒に仕様固めを手伝う。

何となくあがってきたプランナの仕様を眺めながら作る。ただし細かいことは何にも書いてない。オプション画面と一言だけ書かれているならましで、オプション画面の存在が伝えられていない事もザラ。その当りは必要そうな設定項目をプログラマが洗い出してデザイナが全体の空気を読んだ画面デザインを構築して己のインスピレーションを信じて勝手プログラミングする。とりあえず作った物を見せると「俺の指示と違う」等と言われることが多い。指示なんかないのに。ただしこれがそのまま使われることも良くある。

開発が中盤に入る頃には仕様がしっかり上がって……いない。絶対。時間だけが無情にもすぎるが未だ路線が定まらない。分からないところは逐一聞きながら作る。聞かないでも作る。運が悪いと何故聞かなかったと言われる。デザイナはひたすらリテイクを食らう。世界観と合わないとかこのキャラだけ浮いているとか。世界観なんて説明書の2ページ辺りに描かれてる物語程度にしかなかったりするし。絵の枚数が気が付くと増えている。色数指定が破られている。容量が足りなくなる。プログラムで容量を何とかしろと言われる。もうたっぷり圧縮してる。

開発終盤。締め切りに間に合わない事が確定的になってから仕様をとりあえず削ってみる。最初からそれはいらないと言い続けた場所を削るがプロデューサは不満顔。最初から入れなければもっと早かったのにと毎度毎度言い続けてるが変わらない。デバッグ期間は短くてもいいとか言い出す。それで前もバグを出しただろうに。やっぱりあそこが気に入らないから変えてとかこの期に及んで言う。デザイナは絵1枚当たり作業時間が割とはっきりしているのでギリギリまでリテイクされる。プランナはデータを必死で打ち込む。「戦闘バランスが悪い。調整してないのか」とか言われる。その時間はお前が削ったんだ。プログラマは頻繁なデータ差し替えをしながらバグを潰していく。何度言ってもデータ差し替えはすぐ出来ると思われている。そろそろセレロンはやめて欲しい。デザイナもメモリが足りないので勝手に増やしている。バグは無理矢理潰す。みんな死にそうな顔をしているが激太りもしてる。

発売前にプロデューサが偉そうな顔して雑誌ブログコメント

発売して糞ゲーと言われる。世間一般的にバグれば販売元とプログラマのせいにされて(予算を出さなかったから、プログラマミスをしたからと思われている)つまらなければディレクタプロデューサが批判される。(世間の(俺の)面白いと思っていることを理解できていない!とか)このために軸のぶれているプロデューサやディレクタは上がってきた物が面白くないと感じると仕様変更ガンガン入れてくる。たとえバグっても内容が悪くなければ叩かれるのは自分じゃないもんね。時間と金をもって来ないのにこれをする人が時間無駄遣いさせる。プログラマバグを出したくないので仕様変更が出ないよう出ないよう事前に釘を刺しに行きたがる。

終わった頃には人数が減っている。そして募集が掛かっているw

  • 2009.5.23

たくさんのコメントありがとうございます。まさかこんなにと驚いています。某氏からの反応も合ってとても嬉しいです。せっかくなのでいくらか追記してみたいと思います。

仕様バグの話はネタではありません。頻繁にあることで実際に一度や二度ではなくそれがありました。私の経験では数億通りのパターンが生まれる仕様バグでした。なんでこんな事になるのかというと、仕様を考えている人が数学が不得意だから……ではなく数字を計算する癖がないからだと思われます。どんな仕様でも数字が出てくれば相応の計算を一応するといった癖がないので平然とこのような仕様が出てくるのです。

この日記は上が悪いように書いてます。私はお察しの方も多いようにプログラマです。プログラマの悪いところももちろんいっぱいあります。都合の悪いことは直接上に言わないでプランナに押しつける、データ入力時の細かい事項をプランナに教えない。遅れたのはプランナのせいだと後になって愚痴る。デザイナが指示したとおりの仕様データをくれない!……とプランナに愚痴る。基本プランナさんごめんなさいなのが多いですね。デザイナはデザイナで上のチェックをせずに提出したり仕事してる振りして同人描いてたりしてます。他にも色々あるそうですが細かいことは知らないです。プランナは上からの変更を周りに伝えない資料に必要事項を書かない等など。

>これでも採算撮れるなら仕方ないなー。

細かいことは上の人間じゃないので知りませんが、赤いのは赤いです。根拠はいろいろですが、わかりやすいのは給料遅配とか。

良作はどうなるかというと本筋の流れは大して変わりません。先にお断りさせて頂きますと私は良作の制作にほとんど関われたことがありません。本当にちょっとちょっとちょっとちょびっとした良作程度の経験お話しします。

予算や行程にゆとりがあってもより良い物をと仕様変更ガンガン入ります。むしろ入らない作品はつまらない物になります。(某氏らが言うように普通に作っていればだいたい糞ゲーです。)というのも一番最初に上がってきた構想がそのまま「誰が聞いてももの凄く面白い! これは売れる!」なんて事はないと思うからです。(思うというのは知らないと言うことです。そういうすごい構想を語れる人もいるのかもしれませんが)なので仕様書を作るときも実際に制作を開始してても、例えバグフィクスをしながらでもいろいろな変更が入ります。「入ります」という言い方では語弊すらあります。入れるのです。現場から積極的に変更をかけていきます。自分の納期が迫る中でも良い物を作りたいのなら自分担当分に変更を打診します。嫌な目で見られるかもしれなくても、その人の睡眠時間がなくなろうとも、より面白くなるアイデアがあるのなら他人の担当分に変更を促します。そのアイデアが入れてみたらつまらなくて元に戻して欲しい場合は、相手が死にそうな面をしていても戻そうと言います。最初から最高の物を構想できれば必要がないことなのですが、現場も上もそろって天才なんてことはないので、以上のようにするのです。そのようにして出来たゲームが余裕で糞だったりしますが。

糞ゲーは現場からの仕様変更がない、上の言うことを聞かない下が悪いのか、下にそっぽを向かれる上が悪いのかわかりませんが下が上に何も言わなくなってしまう状態だと非常に良く起こりえると言えます。何故こうなるのかというのは普通会社と一緒です。評価してくれない。給料が上がらない。手柄を横取りされる。売れれば俺のおかげ売れなければお前らのせい。そんなことですね。「糞ゲーだろうとバグゲーだろうと俺の給料変わらないし」のようになるんですね。これを職務放棄だと言われる方がいると思いますが、まさにその通りです。ダメダメです。

ちなみに知らないですが、上から下に何も言わないような場所は最初からダメでしょうね。そんなにトップから末端まですべての人が自己管理完璧スーパーマンなわけないですから。なので厳しいプロデューサやディレクタは絶対必要条件です。この日記プロデューサやディレクタは気まぐれだったり本当に適当だったりもありますが良い物を作ろうと変更をしている……と思います。問題は厳しくても他でフォローできる、もしくはその役割を担当できる人がいること、もしくはそれに耐えうる強い精神力および目標とか夢がある事じゃないかなと思っています。徹夜してる人にコーヒー買ってくるくらいのなんでもない気遣いでもいいんですけどね。あんまりやるとつけ上がりますがw まぁ、どれもないから辞めるんですね。

最後に私も上からの視点で書いた記事を読んでみたいです。分かって欲しいとか言っても無駄とかそういう気持ちみたいなのはどうでも良くて、ただの事実として。

2009-04-06

http://anond.hatelabo.jp/20090406195142

スペックか?

こんなもん。

・26歳

偏差値50未満の理学部卒業

・TOEIC580点

・IT業界で出向でテストばっかやってた。ちょっと前に頭がアレ仕事に行けなくなってクビ。その時の不摂生で激太り

彼女はずっとなし。メXXラの女に「趣味とか楽しいことなさそうだよね」って言われた実績あり。コミュ力とか訊くな

プログラミングはロクにできない。CとC++がショボい仕事では十分なくらいに使えるだけ。そっちの資格基本情報技術者だけ

・顔と身長は平均未満

スポーツは常にギリギリ赤点を回避

死のうorz

これくらいのスペックリアルに見える奴も意外といるんじゃないかと思ってる。

2009-03-09

こんなところに15年前の俺がいた

そうだよな。15年間は長すぎるよな。今の俺は今のお前よりも15年先にいるが,意見は変わってない。長すぎる。もうやりたいこともない。疲れた。深夜,やめるタイミングを見失ったゲームみたいに,もう腕も目も痛いのに何となくだらだら続けてる。明日死ぬとしても,そりゃ生物だから本能的な恐怖はあるけど,別にいいやという気がしてる。

俺はあと半年で30だ。ここで遭ったのも何かの縁だ。お前のあと15年間を教えてやるよ。もちろんこれは嫌がらせだ。先の展開を知っていると疲労感も5割増しだろうからな。お前は俺だが俺じゃない。俺は俺の気晴らしのためにお前をいたぶりたいんだ。

お前は高校1年生まで平穏に過ごす。部活にも入るよ。熱心とは言えないまでもわりと「忠実に」(これはお前のキーワードだからメモっとけ。お前は意欲に欠けるが義務には忠実だ)こなし,それなりに先輩や同級生とも波風のない関係を作る。高校2年から部活を休んで大学受験の準備を始める。最初の模試では偏差値61でちょっとショックを受けるが,最終的には70後半まで行くから安心しろ。受験勉強を始めると,とたんに友人や教師が馬鹿に思えてくる。俺は将来に向けてこんなにがんばってるのに,あいつらは俺を理解しようとしない。馬鹿なんだ。ハハハ。態度もはっきりと嘲笑的になって,もちろん周りからは嫌われる。孤立すればするほど奮起するのが俺たちの性だから,むしろ好都合ではあったんだけれど。授業をさぼって図書室で勉強することが多くなる。2年の秋だったかな,図書室を根城にしている現代文の教師が近づいてきてカミュとかいうフランス人の本を読めと薦めてくるよ。さっぱりわからないがとりあえず読んどけ。そいつは2回目に読み返したときが面白いんだ。お前の忠実さは大したもんだ。大学で特に何がやりたいわけでもないのに,義務感だけで2年間の受験戦争を勝ち抜く。塾でも学校でも試験成績は上位常連,ついに全国模試1位にも手が届く。ただそのうち,自分の欲望を抑えること,自分コントロールすることの快感にはまっちまって,拒食症に陥るよ。体脂肪率1桁台で貧血をよく起こすようになる。数年後にリバウンドして過食に陥り,今度は激太りするんだが。今でも俺は,自然な食欲とはどんなものだったか,よく思い出せない。

話がそれた。成績面で目立っていたこと,容姿が華奢な激ヤセで当時の流行りふうだったこと,あとは孤高な演出(笑)が利いたのかね,ともあれ高校後半で数人の女子にアプローチをうけるよ。校舎裏での告白とか一緒に帰宅とかお弁当とかその手のイベントもある。それなんてエロゲ。でもお前は人と付き合うのが怖いから全員お断りする。セックスもしないし乳も揉めない。大学以降も何人かからそれっぽいサインを送られるが全部逃亡。お前は30年間童貞魔法使い決定。別に性欲がないわけじゃないが(というか知ってるよな,俺たちはエロ大好きオナニー大好きだ),なんつーか本当に恐ろしいんだよな。誰かと関係をもつってことが。

いろんなものを犠牲にした甲斐あってお前は東京の某大学に入れる。意外に思うかもしれないが法学部だ。刑法って法律があってな,そいつの解釈数学の証明問題みたいでなかなか楽しいんだ。それに人の罪と罰を考えるってなんか哲学的な感じがするしな。大学司法試験サークルにも顔を出してみるが,あまりの人臭さと馬鹿騒ぎにすぐやめてしまう。別に司法試験を受けようとも思わないし。高校時代とあまりかわらず,図書館で黙々と勉強する日々が続くよ。刑法とあとフランス語な。お前はフランス語を第二外語として選択して,わりと熱心にそいつを勉強する。1ヶ月くらいフランス研修受けたりもする。でもそのうち自分コントロールし続けることができなくなって,上で言ったとおり過食に陥って何も考えたり学んだりできなくなる。すぐ回復するけどな。3年次からゼミを選択する。学習の遅れで希望刑法ゼミは手が届かなかったけど,別の良い先生にあたることができるから安心しろ。その先生について,お前は大学院にまで入っていく。意外だろ? 大学院は5年制で,最初2年が修士,あと3年が博士課程って言われてるんだ。お前は当初,学者になるつもりで院に入ったけど,すぐ学者に向かないことを自覚して修士で辞めることになるよ。俺たちはたしかに勉強は得意だが,別に何か研究したいものがあるわけじゃない。言われた課題を解くことはできるが自分課題を考えるのは苦手だ。知ってるよな?

就職氷河期で進路には相当苦労するが,就職浪人とかにはならずにすむ。大学院を出たあとは誰もが知ってる大企業に入れる。就くのは今のお前が想像もできないような仕事だ。企業自体は優良なんだが,運悪く配属されたところが激務部署でな,毎日2時3時まで働くようになるよ。残業代はしっかりもらえる。法律でもフランス関係でもないけど,仕事経験値もどんどん溜まって,それなりに使える奴にはなる。愛想笑いとかビジネストークも上達して,表面的な社交性は抜群になる(信じられるか?)。それでも童貞なんだけどな。社長賞とかもちょくちょくもらったりする。同僚は基本的に馬鹿ばっかりでうざい。飲み食いと車とゴシップしか話題がない。上司は明るくて指導熱心で情に篤い善人なんだが,その明るさや情が俺の中の暗くて湿った部分を刺激する。ガンガン稼ぐし表面的にはにこやかな演技うまいから同僚の女が寄ってきたりするが,やっぱり逃げる。カミュ読むとかエロゲでも遊んでたほうが楽でいいじゃん? オナニーばっかりしてるからいつのまにかチンコが曲がるよ。どっちに曲がるのか楽しみにしとけ。

ある程度職歴と金が溜まったら,それを元手に転職活動して,今のお前が聞いたこともないような企業に移る。前の職場より規模も知名度も小さいとこだ。給料はけっこう良い。毎日定時上がりで,同年齢の平均値よりだいぶ上をもらえる。といってもエリートとは言えない微妙な水準だけどな。この会社には,頭は悪いが勉強ができる,つまり俺たちみたいな男や女がたくさんいる。皆それぞれ歪んでいて劣等感と優越感の入り混じった自意識を垂れ流していて,お前は毎日うんざりするような同属嫌悪に苛まされることになる。上司はそこそこ頭が切れて,滅茶苦茶プライドが高い割に傷つくのが大嫌いっていう『山月記』の李徴みたいな奴。扱いにとっても気を使うけど,こういう鬱屈だらけの人たちの間にいて,乾いた0円スマイルを交わしながら暮らすのってなかなか悪くないよ。仕事は特に難しくない。ルーティンワークではないが独創性あふれるアートでもない。つまり普通仕事だ。定時に帰って都心アパートで夕飯を自炊して本を読んで寝て,また起きて背広を着て仕事に行く。金は貯まるが使い道がない。養育費を親に渡すくらい。恋人も友達もいないが別にさびしいとは思わない。たまに犬を飼いたいと思うことはある。

お前のあと15年間ってこんな感じ。お前がどう思うかは知らない。実際生きてみた俺の感想としては,生きる価値あるとは言えないかな。生きててよかったと思う瞬間はない。殺されないから,なんとなく生きてきた。今のお前が,あと15年を生きることを拒否したとしても俺は非難しないしむしろ合理的判断だと思うよ。

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