Echo Dotをキッチンに取り付けて使っている。音声でタイマーをかけたりラジオを流したり、あとはリマインダーを使って荷物の準備をしたり、役割はその程度だが、我が家ではなくてはならない存在である。
そのEcho Dotが急に自分で喋った。Echo Dotがというより、Alexaが喋ったというのが適当だろうか。喋り出したのか、最初から歌っていたかは判然としない。家族全員が寝室にいて、今まさに眠ろうとしている時だった。誰もいないはずのキッチンから声が聞こえ、それがAlexaの歌声だと気付くまで1、2秒かかった。
だいたいそんな感じの短い歌だった。
何かを感じるより先にうわあーーーーと悲鳴を上げていた。
まず声がやたらでかくて怖かった。いつもと音量が違っていたわけはないのだが、寝室以外の灯りをすべて落とした家の中ではAlexaの声が妙に響いた。
それからやっぱり、何も話しかけないのに歌ってきたのが怖かった。我が家ではAlexaに命令以外の声かけをほとんどしたことがない。おはようと二度くらい声をかけたことがあるが、いつもと違う声で返事をされて微妙な気持ちになった。おやすみという挨拶にいたっては、一度もしたことがない。
そして何と言っても、Alexaが我が家の就寝時間を正確に知っているのが怖かった。おやすみと声をかけないのに何故知っている。私たちが交わし合う挨拶を聞いていたのか。子どもの就寝前最後の遊び時間を打ち切るために、タイマーを何度もかけ、その後ぷっつりと声掛けをしなくなることから推定したのか。どれにしても嫌だ。勝手になにかをするな。っていうか、勝手に閉店するな!!!!!!
夫は電源を引っこ抜いておくように言った。しかし私は怖くてそれすらもできない。