昔々、あるところに村がありました。
この村の近くには豊かな森があり、村人たちは森で採ってくるフルーツを食べて生きていました。
ある時、村人たちはフルーツ採集を担当制にしようと思い立ちました。
毎日の採集は大変だし、村の中にも仕事はいっぱいありますからね。家を建てたり、水車をメンテナンスしたり。
会議の結果、村を真ん中で分けて、森側に家がある村人たちがフルーツ採集を担当することになりました。
家から直接森に行けるし、採ってきたフルーツが傷む前に処理できるので、効率的だからです。
採集組の何人かはちょっと不満でしたが、採集のついでにフルーツをちょっとつまみ食いしてもいいよ、と言われて納得しました。
それぞれが自分用の道具をオーダーメイドし、技術を磨き、次第にフルーツの採集量は増えていきました。
一方、採集組がフルーツを採ってくる間、残留組も頑張りました。村の中には家が増え、道は整備され、井戸が掘られ、暮らしは快適になっていきます。
村はどんどん栄えていきました。
数年経ったある日のことです。この数年で村には人が増え、残留組も採集組も規模が大きくなっていました。
いつものように採集から帰ってきた採集組を見て、残留組のひとりが大声を上げました。
「採集組の中に、フルーツをつまみ食いしている奴がいるぞ!!!」
その新人は村の大工仕事がいかに大変か、残留組がどんなに採集組を羨んでいるか、採集組がいかに恵まれているのかを滔々と語り出しました。
自分も採集組に入りたい。残留組のみんなだってそう思っているはずだ。
残留組が村で大変な仕事をしている間、採集組は森の中でよりどりみどりのフルーツに囲まれて楽しくやっているに違いない。
採集組は自分専用の道具を持っていてずるい。たまに残留組が採集に連れて行ってもらっても、道具がないからフルーツが全然取れない。
そんなことを急に言われて、村人たちは困り果てました。
残留組全体を敵視しだす者や、このキチガイ新人を追い出せと叫ぶ者、採集の効率が落ちてもいいから交代制にすべきだと言い出す者などが出はじめ、村は荒れました。