2021-03-03

低温調理とんかつを食べて

とある有名店で低温調理とんかつを食べたことがある。

孤独のグルメ井之頭五郎が注文していたものと同じものだ。

低温調理豚肉のやわらかさはノーマルとんかつの3倍ともいわれている。

豚肉ってレア提供していいのか?ってほどのやわらかさがセガサターン(脳天直撃)。

あーやっべえこれ、めちゃめちゃおいしい。

噛みしめるたびにあふれる良質な脂による脳内麻薬のドバドバを感じながらも、

なぜか心では涙を流していた。不思議感覚だった。

この新概念(とんかつ)が、脳の中のとんかつ領域侵食したようだ。

昔、母がパートから帰ってくると、戸締まりをする音と一緒にシャリシャリビニールが擦れる音が聞こえる時がまれにあった。

揚げ油の匂いリビングまで届いてくると、夕食の時間が待ち遠しくなっていたものだ。

我が家のたまの贅沢といえば近所のとんかつ弁当だった。

当時は思いもしなかったが、振り返ってみればとんかつは思い出の食べ物だった。

低温調理とんかつを経て、自分の中でのとんかつひとつではなくなってしまった。

食の価値観更新され、センチメンタリズムを感じてしまうのは、

とんかつにまつわるエピソードまで、記憶の隅に押しやられてしまうことが寂しいからだろうか。

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