2020-12-05

奇妙な商店

数年前、東京の端っこから東海田舎引っ越してきた。

田舎とひとくくりにすると、「これくらいは田舎じゃない」と言われるから、ざっくりと住環境説明すると、スーパーが4キロほど先にあり、最寄りのコンビニよりコイン精米機の方が近い。

そんな環境だ。

来て2年ほどは自転車だけであちこちへ行っていた。

日常の買い物が不便だと感じたので、普段使っているスーパー以外に、ちかくにスーパー商店はないのか?と一度検索してみた。

さな商店があった。

その店だと自転車で5分もかからない。

私は試しに行ってみることにした。

寂れた、こじんまりとした商店だった。

シャッターは開いていて、電気もついているが、薄暗い。

店の前には、何も入ってない雑誌を置くのであろう棚と、なぜか春なのに肉まんなどを温める什器が、電源も入っていないのに置いてあった。中身は入っていない。外観からは壊れているようにも見える。

入り口近くはガラス扉で、中を見渡せるような狭さなのだが、外から見る限りは店の中に人は一人もいない。店員の気配もない。

怖くなってきたが、私は邪魔にならないところに自転車を止めて、中に入ってみた。

店に入ってすぐ、果物売り場があった。

バナナプラスチックのカゴの上に置かれ、並んでいた。

バナナは黒ずんでいた。

Googleレビューでは店主手作りのお惣菜が売りだと書いてあった。

少し楽しみにしていたが、壁際の棚に並ぶそれを買って食べる勇気は、私にはもうなかった。

店に入っても、店員の姿も気配もない。私はなんだか薄気味悪くなってきて、商店を後にし、いつもの4キロ先のスーパーに向かった。

あれから、数年が経ち、車を買った今、近くの商店を探ることはもうない。

あの店にもあれきり行っていない。

今思い返すと、現実にあったのだろうか、何かの夢ではなかったのだろうか、そう思ってしまってさえいる

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