光に向かうから影が落ちるのか、闇に飲まれまいとするから輝きを求めるのか。
どちらが始まりだったのかは、もはや判らない。
瑞々しく美しく生きようと光を求めるほど、影は暗く濃く伸びていく。
人と比べたら恵まれた暮らしをしているのに、頭の中ではいつも死が隣にいて「全ての終わり」を甘くささやき続ける。
なぜそんな気持ちに苛まれ続けるのか、自分でもさっぱりわからない。
でも、思ってしまうのだ。感じてしまうのだ。片手を少し伸ばせば死に手が届いてしまう、それが現実なんだと。
家族や友人、仕事仲間に、私のそんな気持ちを知らせることはできない。
私という存在は知的でセンスが良く、自信に満ちていなければならないと社会が決めているのだ。
そんな存在規定に反する思いを吐露されたところで、彼らは怪訝な顔をするだけなのだ。
死への思いは巧妙に覆い隠され、見つかってしまうことはない、という事実が私を孤独へと追い込む。
今はまだ、自分の内側から沸き起こる死への誘惑を振り払うことができる。
上品な化粧と高価な衣服、仕事を言い訳にした贅沢な酒や食事で、気を紛らわせることができる。
でも、そんなものすぐに効き目がなくなると分かっている。