2020-09-28

Memento mori

光に向かうから影が落ちるのか、闇に飲まれまいとするから輝きを求めるのか。

どちらが始まりだったのかは、もはや判らない。

瑞々しく美しく生きようと光を求めるほど、影は暗く濃く伸びていく。

人と比べたら恵まれ暮らしをしているのに、頭の中ではいつも死が隣にいて「全ての終わり」を甘くささやき続ける。

なぜそんな気持ちに苛まれ続けるのか、自分でもさっぱりわからない。

でも、思ってしまうのだ。感じてしまうのだ。片手を少し伸ばせば死に手が届いてしまう、それが現実なんだと。

そして、そんな内心を明かす相手はいない。

家族や友人、仕事仲間に、私のそんな気持ちを知らせることはできない。

私という存在知的センスが良く、自信に満ちていなければならないと社会が決めているのだ。

そんな存在規定に反する思いを吐露されたところで、彼らは怪訝な顔をするだけなのだ

死への思いは巧妙に覆い隠され、見つかってしまうことはない、という事実が私を孤独へと追い込む。

その孤独は私をさらに、終わりへの誘惑へ引き込んでいく。

今はまだ、自分の内側から沸き起こる死への誘惑を振り払うことができる。

上品な化粧と高価な衣服仕事言い訳にした贅沢な酒や食事で、気を紛らわせることができる。

でも、そんなものすぐに効き目がなくなると分かっている。

いつまで今の状態を保てるのか、想像もつかない。

ただ、自死以外の結末を選べる状態で、ゲームオーバーがやってきてほしいと思う。

何も知らない他人に、安っぽい言葉で私の死を形容してほしくないから。

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