2020-02-23

[]anond:20200223190921

鮎之助と別れて、またどしどしと歩き、兵庫の町に着いた鹿之助は、

そこで女を挟んで浪人と大男とが争っているのを見かけて、仲裁に入った。

浪人に話を聞いてみると、彼はこの浮舟という遊女と馴染みになって放蕩したため、

主君の勘気を蒙って流浪の身となり、仕方なく二人で駆け落ちをしてきたところ、

こちらも浮舟に入れ込んでいた大男が怒り、浮舟を渡すか果し合いをするかと追ってきたということらしい。

そのうえ浪人は、刀さえも売り払って竹光を差していたので、果し合いをしようにもできないのだと言う。

そこで鹿之助が刀を貸すと、浪人は喜び勇んであっという間に大男を斬り殺してしまった。

浪人は浮舟に、これから心を入れ替えて精進し、いずれ名をあげたら迎えにいくから、いまは大坂の店に戻れと言い渡した。

また鹿之助には感謝し、家臣になることを申し出た。

鹿之助は承諾し、兵庫の横道で出会ったということで「横道兵庫之助」という名を授けた。

そして兵庫之助に、浮舟を大坂の店まで送っていくよう命じたのだった。

さて、鹿之助はまた旅を続け、早くも播州上月城尼子義久と面会した。

義久は話を聞いて喜び、すぐさま鹿之助を軍師として遇した。

尼子の家臣たちは、新参の鹿之助を信用していなかったが、あるとき彼が怪物退治をしたことで、たちまち敬服することになった。

この怪物退治については別に申し上げるほどのこともないので省いておく。

また山名配下菊池音八という者がおり、西国に敵う者なしという剛勇無双毛利でさえ手を焼くという大豪傑であると聞いて、

鹿之助は一計を案じ、「伯州の腰抜け・菊池音八を討ち取る者は播州尼子山中鹿之介なり」と高札に大書してあちこちに立てさせた。

音八はもちろん怒り狂い、「舞子の浜にて殺してやるから待っておれ」などといった書状を送りつけてきた。

鹿之助が軽装で出向くと、音八は甲冑に身を固めてやってきた。

鹿之助は笑って「内心、私を恐れているから、大仰な鎧を着てきたのだろう」と挑発した。

腹を立てた音八が鉄棒を振りかざして向かってくるのを、素早くかわした鹿之助は見事に相手の首をはねてみせた。

これにより鹿之助の名は近隣に轟き、容易に尼子を攻めるものもなくなった。

数日後、鹿之助は山名家へ出向いて「毛利家臣、清水三郎である」と名乗り、当主山名氏資に面会を求めた。

鹿之助は、毛利山名との同盟を望んでいると言い包め、氏資が血判をしようと近づいた途端にひっ捕らえ、

そのまま上月城に連れて帰って、降伏を誓わせてから解放した。

こうして山名家は尼子家の軍門に降ったのであった。

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