綺麗だと思った。
そうして暫し見惚れた後に、なんてずるい子なんだろうと、胸の中に陰が差した。
あの子が絶対に言えない言葉を、宮本フレデリカは、冗談めかして伝えることが出来てしまう。
天真爛漫な笑顔ではぐらかしながら、スキップで近づいたり離れたりを繰り返す。
何を考えているかわからなくて、何も考えていなくて、そのくせ「あんな顔」をするんだ。
ウェディングドレスに身を包んだフレデリカは、とても綺麗だった。
ああずるい、羨ましい。そんな風に振る舞えるなんて。
ずるい、ずるい、狡い。
Pさんまゆはそんなこと望んでません。
睫毛の隙間からずるりと呑み込まれてしまいそうな深い色。もちろんそれは彼女自身の様々な想いの現れである。だけど、あれは私の色だ、と感じることが最近増えたように思う。
私はまゆの瞳が大好きだ。
綺麗な緑色が私を見つめる時に熱を宿して爛々と輝く瞬間。私はとても弱いから、その危うい眼差しが一番好きなの。
ごめんね、まゆ。
このままでは佐久間まゆのプロデューサーでいられなくなる。佐久間まゆが望んだ永遠を、佐久間まゆの覚悟を、想いを、全部全部取り溢してしまう。
結局の所私の心にはいつもこの最低な感情がある。目を逸らしたい。
佐久間まゆに感情移入して、感傷に浸ることで誤魔化してはいるけれど、それは彼女にそうして欲しいという自分自身の願望に他ならない。
佐久間まゆがプロデューサーを信じているから、私はプロデューサーの形を何とか保っていられている。
いつか私は、この感情を拗らせて、どうしようもなくなって、佐久間まゆの業だけを煮詰めて作られた「佐久間まゆの形をした何か」になってしまうのだろう。
その前にどうか、まゆの願いを叶えて。