年齢も性別も何もかも、自分じゃない「視点」で世界が展開する。
あり得ない美しさ。
視たこともないそこへ。
父が亡くなってもう5年にもなるのに
それから夢に、時々父が来る。
つまり「どこの誰でもない私」ではなく
現実の私を夢でも視るようになった。
昼下がりなのか、夕方なのか、もう夜なのか判らない。
(この人たちは知らない。かれらも私を知らないかもしれない)
帰り支度をしている。
その寂しそうにしているその人物に、
一緒に帰ろうか?と声をかけた
すると俯いて佇んでいた人が泣きそうな、何とも言えない表情をして
嬉しいような、感動したかのような、目を潤ませてこちらを見た。
一緒に帰ろうか。
あ、なんで声をかけたのかわかった。この人はお父さんだ。
働き盛りの頃の記憶の中の父だ。
凄く嬉しそうだった。
そして申し訳なさそうだった。
一緒に帰ろう、お願いだから。
そういって東京の
私の独り暮らしを、
強制的に終わらせて、連れ帰ったのも父だった。
私は帰りたくなかった。
一番うれしそうで、嬉しいと言って踊ったりする父。
母が寂しがっているから、母が寂しいと言っていると
私を強引に連れ帰って、帰ろうと言ったのは父だった。
一番喜んでいたのも、父だった
お彼岸なので私の夢の中に、帰ってきたのかな。
台風が来るようだけれど
お供え物を買いに行ってこようかと思う。
落ちも何もない。
お帰りなさい。