これは、架空の人物という言葉を人以外に使うことに違和感があることからしばしば使われているものと思われる。
(用例を見ても人以外や人以外を含む集合について使われているように見える。)
実在 | 架空 | |
---|---|---|
人 | 人物 | 架空の人物 |
人以外 | (実在の)キャラクター? | 架空のキャラクター? |
「キャラクター」という言葉には「人格、性格」、「文字」などの意味があるが、「架空のキャラクター」という場合は「物語に登場する者」とか「ヒトに近い自我を持つヒトではない存在」という意味で使われているように思う。「物語に登場する」「ヒトに近いがヒトではない」というのは「架空の」と重複しはしないだろうか。
「架空のキャラクター」があるなら「実在のキャラクター」と区別する意味があるというのだろうか。
確かに「実在のキャラクター」という言葉も使うところでは使うようだが、これは使われる言葉と言えるだろうか。
「『架空のキャラクター』という言葉は少し変に聞こえるかもしれないが、それが意味するところは明らかだからまずい表現ではない」
と感じられた方があるかもしれない。
しかし、私が主張したいのはまさに「架空のキャラクター」には「キャラクター」とは別の、始めにあげた用例と一致しない意味があるはずだということである。
それは「架空の人物として設定されているということ自体が事実でない人物」という意味である。
例えば、私がここで「『例えばあなたが今から架空の人物を考えたとする』と書くとする」と書いたとき、
この文中の「架空の人物」はあなたが実際に今から考えるかもしれない架空の人物を指さない。
なぜなら、この文の「今」というのは架空の時点であり、現実のいつでもないからである。
このような架空の架空の人物を指す概念がなんの役に立つのかはよくわからない。
それでも、「架空のキャラクター」という言葉が指すものとして、「『キャラクター』と同じもの」というよりは適切であるように私には思えるのである。