今に始まったことではないし急に言われたわけでもないが、そこまで自分が感情的にならなかったのが意外だった。
父は言う。おれはお前の歳には結婚してお前を育てていたというのに。個人の人生だからとやかくは言わないしお前も今の生活を続けたいのだろうけど、その病気の女を一生面倒見るつもりなのか。お前も病気だ。共依存だ。治療しろ。まだやり直せるんだから自由になったっていいんじゃないか、と。
父の隣では母が泣いている。死んだおばあちゃんがお前を見たらどう思うか。その歳にもなって、情けない。親戚にどう説明したらいいのか、と。
続けて父は言う。おまえたちの関係は、一般常識からみてもおかしい。お前たちだけならいいかもしれないが、家族は迷惑している。数年間我慢してきたが、いっこうによくならない。おまえ自身が行動しないなら、こちらにも考えがある、と。
普通の生き方ではないことは自覚しているし、長男のくせに親不孝者だとは思う。利益不利益を超えて僕のことを思って本心からそう要求しているのだろう。しかし頭は重いが涙は出ない。僕が間違ってましたこれからは言うとおりに生きます、とも思わない。どうしたものかな。わかんなくなっちゃった。