私が悲しい気持ちになった時、それがいつも表面に出るのは怒りという形としてだった。
すぐに泣き、被害を訴え、まわりはいつも彼女のためになにかしてやるのだった。
会うといつも少し悲しくなった。
何を言っても「そんなことはよくないこと!」と一蹴され、私の好きなことや新しいことはいつもけなされた。
矛盾をつくと泣きながら「あなたは私を傷付ける!人の気持ちが分からないのか!あなたは優しくない!」と言われるのだった。
でもそれは彼女に届かなかった。
彼女のタイミングでいつもシャットアウトされた。そして数日後にはしれっと何らかのお願いのための連絡が届くのだった。
私は意見しても意味がない、向き合うだけ損。話し合いができない。
そんなことに気づくのに10年もかかってしまった。あのとき距離を置けていたら違ったのかもしれない。
自分なりに慕っていたと思う。
今思えばいいように搾取されていたのに気付くのが遅かった。
私が大切にしているものを奪われ怒りをあらわにすると、いつもその怒りについてたしなめられるのだった。
そのたしなめが私の生活や嗜好をけなすものだったとしても、いつも被害者に設定されるのは彼女だった。私には怒る権利がない。
彼女が消えて欲しいと思った時に消えていないと、私はいつも怒られた。
少しずつ私は消えた。一生懸命消えた。
大好きだったムーミンのマグカップはいつのまにか捨てられていた。
それに気づいた日、私が泣きながら帰ったことを彼女は知らない。
一軒家にあるたったダンボール1箱の私の荷物が邪魔で邪魔で仕方ないと言われ、引き取りに行った。