菅官房長官が口にしたのも記憶に新しいこの「怪文書」という言葉。
辞書的には「中傷・暴露するのが目的の出所不明の文書」であり、もともとは「差出人が書かれていない手紙」「誰が貼ったか分からない張り紙」「真偽不明のまま広まるチラシ」などを指す。
それらは単体でも不気味なうえに、しばしばデマを拡散し、読んだ人に疑心暗鬼の種を蒔くことになる。
しかしインターネット上には出所不明の文書が大量に存在している。
定義だけで言えば匿名掲示板の陰口などが全て怪文書扱いになってしまいかねない。
そういうわけでインターネット普及以降は、「匿名の文書」よりも「真偽不明の内部告発」のほうに意味の重心が移行しているように思われる。
さらにややこしいことに、近年は「意味のわからない文書」「謎めいた文書」を指して「怪文書」と呼ぶ誤用がしばしば見られる。
誤用ではあるのだが、それが指している文書自体は(ネットの常として)匿名で何者かを非難する内容のものが多く、辞書を引いてみただけでは誤用に気付きにくい状態になっている。