2017-06-29

大器晩成意味

増田で『老子』もしくは『魏書』を引いている投稿があったので、久しぶりに『老子』の原文に触れた。

大器晩成」っていつも疑問で、漢代以降の「大人物(あるいは大事業)は時間をかけて完成するのだ」的な解釈でもいいんだけどさ。

最近、古い文字資料が出てきて「大器免成」と書かれてて、「大器」は成立することを免れる、だから成立しないのだ、なんて逆の解釈することもある。

この新解釈は耳目を引きがちだが、それゆえに、取ってつけたような印象を受ける。

老子の原文、「大器晩成」がある辺りはおんなじような文構成になっている。

明道若昧。進道若退。夷道若纇。上徳若谷。大白若辱。廣徳若不足。建徳若偸。質眞若渝。大方無隅。大器晩成。大音希聲。大象無形


明るい道は暗きがごとし。

道を進んでいるようで退いている。

高い徳は谷のように深く。

大いに白いものは辱(よご)れているように見え、

広い徳は、足りていないように見え、

剛健な徳は、愉しんでいるように(怠けているように)見え

質実は渝(うつろからっぽ)のように見える。

大きな四角には隅がない。

大きな器は晩成する。

大きな音は、その音が聴こえない。

大きなカタチは姿が見えない。

この辺りの文章は、ものすごく良いモノや大きいモノは、それゆえに逆のようにも見える(あるいはそのように見えない)、という文脈だ。

特に大器晩成のあるところは、

A大きすぎる四角は、それゆえに四角く見えず隅がない。

B大きすぎる音はそれゆえに聴こえない。

C大きすぎる物はそれゆえに見ることができない。

という流れ。

これを踏まえると、「大きすぎる器は、それゆえに完成しているように見えない」とするのが妥当なのではないだろうか。

から「晩成」でも「免成」でも良いような気がするんだ。

出来あがるのにめちゃくちゃ時間がかかる⇔いつまでたっても完成しない って、意味が通ずるよね。

ここでむしろ重要なのは、出来あがるのに時間がかかるorいつまで経っても出来ない……ように見える! じつは大器! ってところなんじゃないだろうか。

大きな器は、大き過ぎるあまり、出来あがっていないように見えるのだ。そう考えるのが文脈的ではないだろうか。

これを踏まえて現代的に譬えると「器のでかいやつは、器がでかすぎるあまり凡人にはなにやっているか伝わりにくい。あるいは、アホみたいな振る舞いに見える」とでもなるだろうか。

「晩成」か「免成」か、の議論だと大きな器が成立するかしないか、すなわち大人物は成功するかしないか議論が向きがちだ。

しかし原文の文脈に照らすと、大器は一見すると器として成っていないように見える。

(徳のある、あるいは「道」に沿う)大人物は一見してそのように見えない、とも読み得るのではないかというのが本増田のいいたいところだ。

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    これを踏まえて現代的に譬えると「器のでかいやつは、器がでかすぎるあまり凡人にはなにやっているか伝わりにくい。あるいは、アホみたいな振る舞いに見える」とでもなるだろうか...

  • https://anond.hatelabo.jp/20170629234043

    馬王堆帛書では「大器免成」であり大器に完成はないという意味だった。本来は前後の句とともに「道」は無形無限のものであるということを表していた。 大器晩成 - ウィクショナリ...

    • https://anond.hatelabo.jp/20170630110359

      元増田です。中国思想専攻でない私のいっちょかみ投稿にとても叮嚀に注を付けて下さって深く感謝致します/// 文字の異同について出土資料と併せて詳しく整理していただき、大変勉強...

  • https://anond.hatelabo.jp/20170630144803

    anond:20170629234043 この流れだと「大きすぎる器からはスプーンで掬えない(水面が下がりすぎるから)=用を足せない」みたいな話かなと思った。 明るすぎる道はハレーション起こして目...

  • 君の 考察は 冗長過ぎです

      本当に 大きいことを 成し遂げる 人物は 若いころは 目立たず   徐々に 徐々に 実力を 養っていき 晩年に 大成すると いうこと                       https://...

  • https://anond.hatelabo.jp/20170629234043

    おおむね同意。 大方、大音、大象との並列から、大器も「これから出来る。出来るのに時間がかかる」ではなく 「もう既にそこにある」とするのが妥当だと思う。「もうそこにあるのに...

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