はじめは沢山のうちの1人だった。
彼の名前は知らなかった。
気付いたら彼を目で追うようになっていた。
彼のことを調べた。
彼の名前を知った。
彼が出ている雑誌やテレビといったメディア類は隈無くチェックした。
楽しかった。
彼の前にも応援している人がいた。
そう彼に知ってもらいたかった。
君の活躍を楽しみにしている人がここにいるんだ、と。
今思えばこの辺りから少し自分の心持ちは変わり始めていたのだろうと思う。
それでも必死に彼についていった。
だって、彼の、彼のファンに対する態度やパフォーマンスが好きだったから。
初めて多ステした。
初めてグッズの複数購入をした。
初めて目当てがメインじゃない扱いのコンサートに行った。
初めてファンレターを書いた。
初めてチケットを血眼で探した。
たくさんの初めてを彼に捧げた。
彼を好きになって数年、
「彼を応援したい」
いつしかそれが、
「彼を応援しなきゃいけない」
になっていた。
どこかで、今の彼は自分が好きだった彼とは違うことはわかっていた。
それでも認めたくなかった。
彼を好きなことに違いはなかった。
ある時、彼の言葉を聞いた。
そこに昔の彼はいなかった。
彼が変わってしまったこと、
その2つに気付いてしまった。
そして決めた。
彼の担当を名乗ることを辞める。