かつて、個人サイトのBBSは、基本荒らされているものだった。
なにせ多くの掲示板スクリプトが、ろくな荒らし対策をしていなかった。
排他制御はflockだった。過負荷がかかると掲示板データが壊れていた。
HTMLタグのエスケープには漏れがあった。JavaScriptだろうがCSSだろうが埋め込み放題だった。
タグが使えればもう後はブラクラを貼るなりグロ画像を貼るなり文字を全て巨大にするなり好き放題だった
そうやって荒らされた掲示板は見るも無残だった。
昔のインターネットはよかったなどと言う人は、荒らし依頼サイトを見たことがないに違いない。
あの悪意だけで、何の正義感もなく、単に依頼されたからというだけで荒らしに行く連中を。
「ここの管理人がこのサイトを馬鹿にしてました!」と一言書かれるだけで報復にいく連中を。
単にツールを流すだけなので、荒らす方にもなんの労力もない。掲示板を機能不全にすることはたやすかった。
そうやって荒らされた掲示板の末路を見たこともないに違いない。
数日そうやって荒らされただけで、掲示板にあったコミュニティは簡単に破綻する。
管理人にだって対応する余裕はない。なにせインターネットは従量課金だし、Googleがないからググれない。
よくある管理人が半隠居状態で、常連だけで回していた掲示板だったらなおのことだ。
そんな災害のようなできごとだけで雲散霧消するコミュニティだらけだった。
個人サイトだって、ちょっとでもアングラに関わればそういう災害に巻き込まれることがあった。
それが昔のインターネットの一面だった。
正義感で燃えている今とは違う、また別のディスコミュニケーションによる恐怖があった。
昔のインターネットはよかったなんて、俺にはとても言えない。