真面目に答えず、出来る限り嘘と虚構を織り交ぜて答えていきたい。
「ご苦労様病」だ。
数年前、テレビか何かで「お疲れ様です」は目上の相手向き、「ご苦労様です」は目下の相手向きだとかを知ってな。
まあ、そのときは「文法上、正しくてもそれが世間に浸透しているのなら気にしない方がいい。言葉とはうつろうものだ」と気にも留めなかったんだ。
だが翌日、仕事の後輩がいつもどおり何の気なしに「ご苦労様です」と言ってきたとき、発症したんだ。
私は「ああ、ご苦労様」と平成を装って返したが、錠剤が喉に引っ付いたときのような、心地の悪さを覚えたよ。
自分の理屈の上で「言葉とはうつろうもの」と言いながら、それでも気にする自分に
「ご苦労様」という言葉をふさわしくないとされる状況で使われる度に、私の免疫細胞が死んでいくのを感じた。
……のだが、最近また「お疲れ様です」と「ご苦労様です」の新解釈が出てきて、私は内心震え上がっている。
え……ああ、うん。
……今の戸惑いは、そもそも君と私の関係性をどう判断すべきか困ったからだぞ。
だが、簡単な話だったな。
そう思い込むことが、私の“民間療法”だ。