男女が半々。
会社の行事……歓送迎会かなにかのあとか、軽くアルコールが入っている様子。
「○○さんちで飲み直そうよ!」
「わたし、つられてこっちの方面に乗ったけど、帰れるのかな」
時計は22時。
降りてもう一軒というには少し遅いし、かといってこのまま帰るのはもったいない時刻。
私は7人がけの真ん中に座っており、左の3人がその同期の集まり。
3人を取り囲むかたちで、残りは立って、会話が交わされていた。
メガネの男性の話に大きく相槌を打ちながら、肩や二の腕をボディタッチ。
「いいなー、今度連れて行ってくださいよ!」
なにかと話題の中心となり、周囲のつっこみに全身でリアクション。
仲間から話しかけられるときちんと返事をするが、基本はスマホをフリック。
降りて飲み直す話がまとまったのか、次のターミナル駅でみなが降りていく。
座席の女性と、隣のクールな男性だけが、理由をつけて、残った。
女性も、みんなに大きく手をふる。
2人だけ残った。
不意に身を寄せた女性。
左手を、男性の左ふとももに乗せた。そのまま、男性の耳元にささやきかける。
さっきとは違う。
聞き取れない声で。
見向きもしない男性。
言葉だけは返す。
その薬指には、指輪があった。
そのまま15分ほど過ぎただろうか。
ある停車駅で減速すると、男性が何の前触れもなく立ち上がった。
男性はそのままドアへ歩いていく。
「おい、降りるぞ?」
あわてて荷物をつかみ、走り出る女性。