事業所移転に伴って、契約していた社宅用の賃貸住宅を解約した。
管理会社は物件と離れたところにある業者だったので、立会も面倒だから錠は開けたままで、鍵を玄関に置いておけばいいとのことだった。
こちらとしてもその方が時間の調整をしたりする手間もなく楽だったので助かった。
そうして無事に引越も終え、鍵を玄関に残して立ち去って一晩が明け、先ほど管理会社から連絡が入った。
今までお世話になりましたとか、鍵は確認しましたとか、ひと通りの挨拶を終えてから初老の不動産屋は言う。
「(仲介の)不動産屋さんから聞いてるだろうけど、契約で敷金は返金できないけど大丈夫ですか?」
大丈夫ですか?という質問を投げてくるということは概ね大丈夫ではないということだ。
幸運にもすぐに見つかり、案の定書いてあった。
甲は、明け渡しまでに生じた本契約から生じる一切の債務を敷金から控除しなお残額がある場合には、本物件の明渡し後、遅滞なく、その残額を無利息で乙に返還しなければならない
当然である。
その旨を説明すると、ベランダにゴミ袋がいくつか放置されていたとか、離れた物件まで行くのだって金がかかるんだとか、だから費用負担に応じてほしいと言う。
もちろん原状回復にかかる費用を負担することはやぶさかではない。
それについては明細を立てて、残額だけ返金してもらえればいい。
だけどおたくの手間賃は違う。
いくら離れた物件であっても、管理会社が管理物件を訪問するのは通常業務であるはずだ。
そうした話をすると不動産屋もしぶしぶ納得した様子で、鍵はポストに入っているからゴミだけは処分していってくれと言う。
ゴミ残置はこちらに非があることだし、処分費で3万円とか取られても困るので承諾した。