2014-10-25

電車白髪の老紳士に助けられた話

10年前、中学受験をし、県外の中学に通うことになった。そこで立ちはだかったのが電車通学だ。

少し前まで小学生だった私には通勤ラッシュなど耐えられない。

みくちゃにされて押し込まれ目的の駅に着いて「降ります!」と叫んで通してもらおうとしても降りられないことがしばしば。

ドア付近に立ち、荷物が邪魔にならないように床に置くと、自分の身体だけ流され鞄と別れをつげることになる。

「疲れるから準急で座っていく」ことを見出したある日。

無事に座ることができ、小さく丸まって眠りについた。

浅い眠りと目覚めを繰り返し、目的の駅の付近でしっかりと起きた。

早目に降りる準備をしよう、と顔を上げると、目の前に白髪紳士風の方が立っていらっしゃった。

その方は降りようとする私に向けて「ちょっと待っていなさい」と手をかざす。

わけもわからず座ったままでいると、紳士なおじさんは、「降りる人がいます」と周りに伝え、人が通れるようなスペースを作ってくださった。

そうして私に「どうぞ」とおっしゃった。

何度も何度も「ありがとうございます」を繰り返し、開けてくださった道を通って無事に下車した。

猛暑日に体調を崩した時は、おばさんがそっとウェットティッシュと飴をくださった。

ずっと眠っていたら、「きみ、いつ降りるの? 大丈夫?」とそっと声をかけて下さったおじさんがいた。

当時は中学生若者の中でもさら若者で、むしろこちらが気を遣うべき側だった。

しかしこれほどまで助けられてしまった。

しばらくすると体力がついてきたため、きちんと降りられるようになったし、座らなくても大丈夫になった。

年寄りに席を譲ると「ありがとうございます」と言ってくださった。

しろ感謝したいのはこちらの方です、とそっと思っていた。

今でも電車を使っているが、トラブルは絶えない。むしろ当時が不思議なほど恵まれていた。

中高生が騒いだり、目の前に立ってたのに割り込まれて座られたり、ぶつかったぶつかってないで口論になったりする大人を見かける。

ならばお年寄りは皆いい人か、というと、必ずしもそうとは言えない。

私は、あのおじさんおばさん達のように年をとって、思いやる気持ちを忘れたくないな、と思っている。




追記(2014/10/26)

トラックバックでのご指摘を元に、タイトルを「電車白髪の老紳士に助けられた話」に変更いたしました。

旧題は「電車では、むしろ年寄りに助けられる」です。

若者や大人だけでなく、お年寄りの方でもマナーちょっと……と思うことがあったため、一文追加いたしました。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん