小学生の頃。
友達の部屋で遊んでいたら、家の奥から突然お経が聞こえてきた。
とても野太い声。どうやら奥には男の人が何人もいるようだった。
だから家の奥にはうちと同じように畳の部屋があるはずなのだけど、
家に行くといつも彼女はその部屋の襖を真っ先に閉めて、
センキョなんて大人のすることだし、私が気に留めることは何もなかった。
床にまで響くお経は、止む気配がなかった。
私たちはZONEの歌で無邪気にダンスを考えていた最中だったけど、
お経がうるさくって もうそれどころじゃない。
さっきまでの笑顔はどこへやら、追い立てるように私を外へと促した。
今日はもう帰って。
ふうん、と聞いていた母は「外で話すんじゃないよ」とだけ言った。
母同士も仲がよかったから、
「あたしたち昨日、まちゃみに会っちゃったんだよねー」と笑顔だ。
どうして1こ上の子と仲良しなんだろう。芸能人に会うなんてうらやましい。
どこでまちゃみに会ったのか聞くと、そう遠くない場所だった。
テレビに映ったんだろうか。置いてけぼりみたいな気分で、つまんなかった。
お察しの通り、
彼女(もちろん1こ上の子も)が「そういうこと」だったのを知ったのは
だいぶ後になってからだった。
彼女のお母さんが母に電話をかけ、時々 母とお茶をしていたのは、
センキョの前と、まちゃみに会える機会のお知らせと、新聞購読のお願いのとき。
そう言って、彼女は泣いていたという。
地鳴りのようなお経が聞こえたあの日の晩も、地団駄踏んで泣いていたらしい。
友達に知られたくなかった、と。
彼女は まだ小2なのに、
その頃になるともう彼女とも話すことはなくなっていたけど、
すっかりギャルの姿になって大声で笑っている彼女とすれ違うたび、
泣くところなんて見たこともなかったのに。
あの子が泣く理由を、知らなければよかったと思う。
その彼女が婦人部の将来を担う立派な学会員の成長したのかどうか、非常に気になります。