この二年で、私の生まれ故郷は大きく変わった。
平たく言えば、完全に崩壊した。
もう戻ってこない。復興しない。
私の生まれは津波で被害を受けた。とはいえ、陸前高田市のような中心部ではなく、ギリギリの周辺部だ。
私も陸前高田市でボランティアをしていたから、あの惨状とは比べようもない。
物事が移り変わることは止めようがない。
いつも学校へ行くために通っていたけもの道、海辺の最早ひと気のない公園は津波に飲まれ、道は寸断した。
もうこれらに人が戻ることはないだろう。
私の生まれは古い古い集落で、番地より後ろの住所がないくらいだ。
新しい住人には古い祭りが受け入れられなかった。夜中に大太鼓を持って歩くような祭りは、今の感覚からは受け入れ難いものなのは理解に難くない。
そして人が死んだ。
しかし、その後の失業、家の立て直し、あるいはその後の人生に絶望したのだろうか、自殺する者、生きる気力をなくした者がちらほらいた。
連綿と続いた集落は失われた。
復興、という言葉があるが、これら失われたものを取り戻すことができるだろうか。
私にはできるとは思えない。
皆がもう昔ながらの村の付き合いはできないと感じていた。
私が懐かしむべき故郷はもう帰ってこない。
生まれ故郷に帰ると、涙が出てくる。景色は何もかも色褪せ、ゆっくりと死んで行くように見え、人にも気力がなくなった。
なのに懐かしさと悲しさを覚えるのは何故だろうか。
私は生まれ故郷にもう一度活気を取り戻したい。
元に戻す、ではなく、新しくつくる、が必要ではないだろうか。
私には何ができるのだろう。