はてなキーワード: なかむらたけしとは
と言うほど詳しくないし記憶と捏造で語る系譜だと最初に断っておく。
萌え絵の直接の親はアニメ絵である。なぜなら、80年代から90年代初頭くらいにはマンガ絵のイラストレーターというのはそれ一本で食っていくのは無理な状況というか歴史的にまだそういう仕事が確立しておらず、ゲームも含めイラストの仕事をやっていたのはアニメーター経験者ばかりだからである。マンガ家がイラストレーターを兼業していたのは寡聞にして知らん。
で、エロゲーの系譜と言うとまた古いのだけれど、グラフィック性能がそれなりになってちゃんとしたマンガ絵が最初に採用されたのはおそらく92年の「同級生」だろう。これもイラストピンの仕事であるので、アニメーターである竹井正樹が担当した。
しかし、これが萌え絵であったのかと言われるとやや疑問が残る。おそらく、その絵は今の人が萌え絵と言われて連想する絵とはだいぶ趣が違うはずだ。この絵はアニメの美少女絵であって、決してギャルゲー特有の絵柄ではなかった。
では、ギャルゲー特有の絵柄である萌え絵がどこから始まったのか?個人的にはなかむらたけし、CARNELIAN、みつみ美里、甘露樹のあたりが影響として大きかったのではないかと思う。彼らの絵は大きな目が特徴で、どちらかというとすらっとした体つきであった。
そこから樋上いたる、mooなどの丸みのある優しい絵柄も現れ、これらがミックスされて萌え絵のパターン的な絵柄が出来上がったのだと思う。
いわゆる、大きな目、低めの頭身、立体感があり、影には彩度が低い色を選び境界がボケた塗り方をする00年代オタク絵の王道パターンだ。
また、この頃になるとアニメーターがマンガ絵のイラストを担当するのではなく、マンガ絵イラストレーターという仕事が確立してくる。そこに萌え絵が導入されていくのもこの頃のことである。
そこからのマンガ絵イラストの進化は非常に早い。10年代に入ってくると、影の色に補色を加えた塗り方が隆盛し、目の大きさも00年代と比べると小さくなってきた。また、根本的な画力が足りない人たちはどんどん淘汰されていった。
これらを萌え絵として数えるかどうかは人によって変わってくると思うが、今のCGイラストで萌え絵の影響を受けていないものは探す方が難しいだろう。
大げさな言い方をすると、萌え絵は今のマンガイラストのデファクトスタンダードになった。
それどころか海外にも羽ばたいていき、アメリカでも萌え絵の描き方的な本が売られるほどになっている。俺がChristopher Hartの本を手にとって驚いたのはもう5年以上前の話だ。中国、台湾、韓国のイラストレーターも非常にレベルが高い。
例えば「To Heart2」と言う作品がある。
この作品にはみつみ美里、甘露樹、なかむらたけし、カワタヒサシと言う四人の原画家がおり、それぞれの個性をもって
各キャラクターの原画を描き、一つの作品として纏められている。
その絵柄の違いに特に難色を示すファンはそう多くはいない。それは何故か。
絵柄の違いはあれど、To Heart2と言う世界の中から極端に逸脱してはいないからだ。
対して天元突破グレンラガン第4話。もう言うまでもなく逸脱している。
『逸脱し過ぎた個性』は個性でないのである。
オタクもそうバカではない。個性を認めないほど愚かではないのはTo Heart2が証明している。
では何故、グレンラガン4話はここまで大ブーイングに包まれてしまったのか。その答えがここにある。
今回の作画を担当したのはアニメ「BECK」の監督との事だが、彼の過ちは
「BECKで通用した事が、グレンラガンでも通用すると思ってしまった事」である。
普通のアニメファンからは存在すら目に留めてもらえないような「BECK」と、この春「らき☆すた」「ハヤテのごとく!」に次ぐ
人気を獲得している「天元突破グレンラガン」を同列に置いてしまった事なのである。
かつて「魔法少女リリカルなのは」でも同様な事が起こり、件の個性的な絵柄をベルカ式と称されてファンの間では
黒歴史にされている。
いっそグレンラガン4話の作画も「BECK式」とでも称してせせら笑う事でしか、一人の「見えなかった男による失敗」によって
裏切られたファンの傷ついた心を癒す事は出来ないのかもしれない。