Xちゃんは幼なじみだ。彼女とは小さい頃に家が近く(と言っても車が必要な距離)、親同士が会う時に子供同士でよく遊んでいた。
大抵は室内で人形で遊んでいたと思う。日に焼けた肌に白い歯の、よく笑う子だった。
Xちゃんはその後、親の都合で外国で暮らすことになった。白人が多い風光明媚な国だ。本人も最終的にはそちらの国の国籍を取得した筈。
引っ越した彼女とはクリスマスカードぐらいしかやり取りは無かったが、親同士は連絡を取り合っているようだった。
高校一年生の夏、Xちゃんは一時帰国して、その際に私の家にも立ち寄った。
彼女の明るさや屈託のなさは小さい頃と変わっておらず、お喋りしながら自宅の周りを散歩して楽しい時間を過ごした。
家に戻ってきた辺りで話が学校の話になったので、私はXちゃんにクラスの集合写真を見せた。
良いクラスで男女の垣根もセクハラもなくとても楽しかったので、Xちゃんにも見てもらいたいと思ったのだ。
Xちゃんが写真の隅々を見回している感じにアレッと思った。しかし知らない子達の写真なんてずっと見てても退屈だろうなと思って、
とか言いながら写真を片付けようとした。
その時に問題の
正確な表現は忘れたが、続けて
とか言っていたので級友達の外見をdisっていたのは間違いない。
まぁ確かにXちゃんが言う所のスポーツ万能のジョック達に比べたら、日本人男子は平たい顔のモヤシに見えたのだろうと今なら思う。
しかし。
「鏡を見ろよ。」
「西洋人好きなんですね、西洋かぶれかもしれないけど自分はアジア人だよね。」
…とか今ならスルスルとディスり返せる。しかし当時は「エッ…」と思ったものの何も言うことができなかった。
私自身もXちゃんの住んでいる国に短期間だが行った事もあって、その時も陰に陽にアジア人差別を受けた。
Xちゃんも長年の外国暮らしで一度も見た目から来る差別を受けなかったとは考えにくい。なのに
もしかしたら彼女は深く考えずに思ったまま喋ったのかもしれない。が当時の私にはショックすぎてその後一切連絡を取らなくなってしまった。
今思えば、クリスマスカードの交換ぐらいは続けていれば良かったなと思う。
というかそもそも、言われた時点で怒るか、
「なんでそんな事を言うの?大事な友人達の写真だから友達のXちゃんに見せたのに、そんな事を言われたら悲しいな」
とか、
「『私は』脳筋っぽい感じよりこっちの方がいいな」
とか言えていたらXちゃんも何か反応できただろうし。
当時の私はあまり怒らない、というか自分の気持ちをどう表現したらいいかわからない人間だった。
あれから何年もかけて、少しずつ表現できるようになっていった。でももう彼女と会う機会はないだろう。
Xちゃん、元気にしているだろうか?
留学先で顔面差別されて八つ当たり対象を求めてたんでしょ