2018-11-04

[] #64-7「ヴァリランキン」

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有るかどうかも分からない、あったとして巧妙に隠されている可能性が高い。

二人は数字の羅列を注意深く凝視した。

どこかに異常な数字はないか矛盾点はないかを探す。

「やっぱり23話の投票数が妙に多いが、投票の総数に間違いはなさそうだな……」

「……あ!」

意外にも、それはすぐに見つかった。

事実とは、いざ蓋を開けてみれば容易いものなのである

鍵が厳重にかけられた家は、部屋の中まで防犯対策をしているとは限らない。

「ここ、ここ見てください!23話ではなく、他のエピソード投票数です!」

フォンさんの指摘する箇所を見てみる。

「8話、16話、20話の投票総数が……3日後に減っている!?

明らかに不正だと分かる数値だった。

そこから操作履歴を辿っていくと、どうやら全体の投票総数と帳尻を合わせるため、他のエピソードの票を23話に回したことが分かった。

まり決定的な証拠である

父たちは、すぐさまマツウソさんとシューゴさんのもとへ報告に向かう。


…………

不正操作があったことは確かです。まだ犯人が誰か、どういった目的かまでは解っていませんが」

「そうか、オレの予感が的中したとはいえ複雑な感じだ……」

この事実にショックを隠せないようで、マツウソさんは沈黙している。

あるとは思わなかった不正操作だけではなく、それが内部の人間可能性が高いのだから尚更だろう。

「外部から侵入された形跡がない以上、今回の件に深く関わっているスタッフ可能性が高いでしょうね」

ここから犯人探し、といきたいが一応はマツウソさんの面子もある。

これ以上はでしゃばらず、マツウソさんに任せることにした。

「まあ、それはマツウソさんに任……」

だって……第23話『こんな感じの魔法書ありませんか?』が27位なんて、おかしいじゃないか!」

「……は?」

しか観念したのか、近くにいた犯人勝手に白状を始めた。

そして、その犯人こそマツウソさんだったのだ。

父たちにとっても、これは予想外だった。

だが、これまでの言動を見れば辻褄は合う。

こちらの主張に取り合わなかったのも、不正はないと言っていたのもマツウソさんだったからだ。

「第1位とまではいかなくても、少なくとも1ケタには入っていないとおかしい!」

「ええー……」

マツウソさんの変貌ぶりに、父たちは困惑するしかない。

どうやらマツウソさん、実はヴァリオリの熱烈なファンだったようだ。

これまでのアニメ制作に口出ししなかったのも、ファンとしての彼なりのポリシーからくるものだったのだろう。

だが今回の人気投票の結果は、彼の公私を混同させるほどの作用をもたらしたらしい。

「屈指の名エピソードなのにぃ!」

「おいおい、企画私物化かよ……」

蓋を開けてみれば、事実だけではなく真実まで容易かった。

まりにもお粗末な幕引きに呆れ果てたという。


…………

「……というわけで何やかんやあって、俺たちはランキング不正を未然に防げたってわけだ」

だけど、そうやって公正な結果が出たとしても大衆の反応は賛否両論

何とも報われない、ご無体な結末である

「変な感じだよ。みんなで決めたランキングなのに、みんなが納得できる結果にならないなんて」

ランキング自体そんなもんだろ。個々人がどこまで納得できるかを弄んで楽しむゲームなんだから

いくら厳正に募ったとしても、それを全ての人間が納得できるわけがない。万人が納得できるランキングなんぞ存在しないんだよ」

ランキングとは、とにかく人を惑わすものらしい。

それでも求め続ける人は後を絶たないのだから、恐ろしい話だ。

(#64-おわり)
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