2018-02-21

昔の香典帳を集める仕事をしている

香典帳というのは、お葬式の時の香典を誰から何円もらったかを一冊の帳面に記したものだ。

古くは近世のものもあるが、私の仕事場北海道なので、近代以降の香典帳を主に集めている。

集めているのは、正確に言うと香典帳だけではない。

香典の他に、葬式必要ものを一式記してその代金をまとめた買物帳や、お布施を払った際の布施帳なども付随することが多い。

これらが一緒になった形式帳面もある。

どうしてこういうものを集めるのかというと、物価がよく解るからだ。

人の死というのは今も昔も絶え間なく続く。

からそれに際しての香典や、調達物資は、物価の移り変わりの物差しとして極めて優秀なのだ

昔は、コメ物価指標になっていた。高度経済成長期以降、食料の多様化により、コメという物差しはぐにゃぐにゃとあやふやものになってしまった。

他の、価値があると考えられてきた指標すらそうだった。貨幣で買える貨幣も横行した。

だが、未だ死ぬことは、医学が発展したとは言え平等だ。共同体があれほど変質したとしても、寺なり神社なり教会なりで、古墳時代とさして変わらない営みが続いている。


今日は、古い家の仏壇に入っていた香典帳を見た。昔ながらの折り紙状の和紙帳面だ。9才で死んだ男の子のものがあった。尋常小学校同級生一同で香典が出されていた。

親族(子孫)からいただいた付随データ網膜上にダウンロードする。昭和11年腸チフスで死んだのだという。

昨日は、古いHDDに保存されたpdf香典帳を見た。元々はエクセルというデータ形式らしい。94才で死んだ女に、101才の姉が香典を出していた。

これも親族からの付随データが功を奏して判明したもの平成29年香典帳。死因は老衰小学校教諭を長く務めた勉強熱心な女で、この時代にしては香典が多い。

姉はそれから4年生きた。その香典帳は時のなかで失われた。

研究の成果を学会で発表した際に批判される点は以下の通りだ。

香典システムから物価や人的ネットワークを構築するのはよい手法だが、そもそも香典を出さな葬式家族葬や新しい宗教観に基づく葬式)の形態が増えたことによる影響はどう考えているのか?

葬式必要な物品を葬儀会社の一元化して調達する影響はどう考えているのか? いずれも、鋭くも有り些末な指摘とも言える。

もっと明るい題材で社会の移り変わりを切り出せればいいのだが。

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