2013-04-12

頼むから、頼むからサークルクラッシャーはやめてくれ。

チカチカと点滅する蛍光灯の下で彼女は言った。

「やめてくださいよー。そんな感じじゃないですってば」

うだるような夏が一足早く来たようなむせかえる湿気の中、薄暗い喫煙所タバコをくゆらす彼女。シトシトと降る雨の音がボクをいさめるような気がしていた。

「今は大事ときなんだ。社内でイザコザを起こさないで欲しいんだ。頼む。」

彼女がくすりと笑ったように見えた。

「違うんです。たまたま小山田さんが帰るっていうから。だったら終電まで軽く飲みませんか?って。そう言っただけなんです。」

彼女はボクが知らないと思っている。つい1週間前まで続けられた山城との数ヶ月に及ぶ不倫行為を。

山城には奥さんと生まれたばかりの子供がいる。社内で壮大な宴会を開いて祝ったのも記憶に新しい。長く一緒にプロジェクトをしていた金田はそれはそれは嬉しそうに酔っぱらっていたものだ。

ただボクだけはまったく酔えないでいた。出産当日、奥さんのもとに駆け付けるまで山城彼女と激しいセックスをくり返していたことを知っているからだ。

おぎゃあおぎゃあと遠く聞こえる病院トイレ個室の中で、ふたりがあつく体をぶつけ合う。そんな様子を思い浮かべただけで吐きそうになる。

社内では周知の事実であった。社員の中にはそれを面白がるものもいたが、外回りなどで社を空けることが多い営業職は何が起こっているのか分からず、その温度差がチーム内の不和にも響いた。内勤の皆が隠語クスクスと話題にする。仕方なく山城には厳重注意をした。

山城プロジェクトへの影響を理解してくれ、彼女との関係を終わらせてくると誓ってくれた。ただ、彼女には何も言えないでいるボクがいる。ボクとかなり年の離れた彼女は同じ生き物だとは全く思えないのだ。

「頼むから、ボクの会社を壊さないでくれ」

ボクは彼女懇願した。

小山田さんとはそんな関係じゃないですよ〜」

彼女のんびりとした口調で返事をする。ボクは今どんな顔をしているんだろう。

西川とも二人で飲みに行ってたよね。綾子ちゃん、キミが西川さんカッコいいですよねーと言ってるのを教えてくれたよ。」

「それも違いますってば〜」

彼女は事の重大さを分かっていないのだろうか。プロジェクトでは小さいが、責任のある仕事を任せている。少しでもプロジェクトを円滑に進めたいと思ってくれているのとしたら彼女の行動は訳が分からない。

小山田山城西川も同じプロジェクトチームメンバーだ。その中で次々と手を出していればチーム内の不和は目に見えるハズである

彼女はこのチームをどうしたいのだろう。

「キミがチーム内でいろんな人とそういうコトになったらどうなると思う? このままキミが変わらないのであれば、チームからはずれてもらわないといけない。」

「そんな…、そんなのってヒドいです…。」

彼女が目に涙を浮かべる。やめてくれ泣かないでくれ。一体悪いのは誰なんだ。

ボクなのか。彼女なのか。それとも引っかかってしまうチームのメンバーなのか。

ボクはやっと立ち上げたこの小さな会社必死に回している。

最近社員も増えて新旧メンバーが入り混じりつつも、仲良くやってくれている。

誰かが仕事が終わらないと積極的に手伝ったり、分からないトコロを教えあったりしているのだ。

ボクはここの空気が好きだ。これがいつまで続くか分からない。もちろん変わりつづけることも必要だ。だけどこの変化はボクが望んだものじゃない。こんな風になりたくて会社を作ったんじゃない。

頼むから、頼むからサークルクラッシャーはやめてくれ。ボクの会社を壊さないでくれ…。

  • 「サークル」クラッシャーじゃねぇべ。 あと悪いのは採用した人事。

  • 小山田と山城と西川を集めて全部ぶちまけちまえばいいじゃん。 で、あいつは出来の良いTENGAだと思って、情は移さないようにしてくれって言えば解決じゃね? 各自が割り切っちまえば...

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